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2020 年度 実施状況報告書

リテラリー・マーケットの変容と初期モダニズム小説の語りの形成

研究課題

研究課題/領域番号 18K00440
研究機関関西学院大学

研究代表者

伊藤 正範  関西学院大学, 商学部, 教授 (10322976)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード英米文学 / イギリス小説 / 群衆 / リテラリー・マーケット / 商業 / 市場 / モダニズム
研究実績の概要

本年度はJoseph Conradの小説を主な対象として研究を継続した。昨年度の研究活動で収集した一次資料、特に当時のT.P.'s WeeklyやRidgway'sなどの文芸誌の分析にあわせ、The Secret Agent (1907)のテクスト分析を行った結果、ヴィクトリア朝以降の連載小説の一般化に伴う読者層の変化とリテラリー・マーケットの変遷が、小説の語りに大きな影響を及ぼしていることが見出された。この考察の鍵となるのは、テクストにおける群衆の表象である。留意しなければならないのは、小説中に書き込まれた群衆の姿が、Gustave Le Bonなどによる群衆理論において主な観察対象となった物理的集合体としての群衆とは異なり、新聞を読む、遠隔的に結び合わされた大衆、いわゆるGabriel Tardeの定義する〈公衆〉と密接に重なるという点である。新聞同様に大衆によって消費される〈商品〉としての立ち位置を固めつつある小説が、どのようにして自己の芸術としてのあり方との折り合いをつけていこうとするのかを、言い換えればその両者のせめぎ合いから生じるジレンマがテクストの語りにどのような影響を与えているのかを、テクストに埋め込まれたジャーナリズム的言語の分析を通して考察した。
上記研究内容については本年度中の成果発表を目指し論文化を進めていたが、COVID-19感染拡大の影響により研究に大幅な遅延を来し、成果発表まで至らなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

COVID-19の感染拡大によるオンライン授業への対応のため、当初想定していたエフォート率を大幅に下げざるを得ない状況となった。あわせて国内外の図書館の閉館により、資料収集に際しても多大な影響を来した。

今後の研究の推進方策

引き続きJoseph Conradの小説を主な対象として研究を継続し、成果発表を目指す。具体的には、イギリスとアメリカにおける同時連載・出版が一般化しつつあった当時の状況や、ニュー・ジャーナリズムの亢進と連動した文芸出版のあり方の変化に注目していく。あわせて、リテラリー・マーケットそのものを取り巻く状況の変化がConradの語りにどのような影響を与えたかを探っていく予定である。しかしながら、COVID-19の感染状況が引き続き深刻な状況にあるため、資料収集に際して大きな影響があるものと想定される。状況を見ながら、必要に応じて研究方法あるいは対象に変更を加えることで課題遂行を目指したい。

次年度使用額が生じた理由

COVID-19感染拡大の影響により、研究計画そのものに大幅な遅延を来し、国内外への資料収集や、論文作成に伴い必要となる予定であった旅費、物品費、謝金において未使用額が生じた。残額については次年度における資料収集や物品購入において使用する予定である。

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公開日: 2021-12-27  

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