子どもの成長にとって「おじさん」的人物が果たす役割に着目した本研究の社会的意義は、近代市民社会において絶対視されてきた両親と子から成る聖家族モデルの相対化を促し、多様な家族のあり方を肯定するドイツ児童文学の紹介と普及を行ったことである。その起点を本研究は両大戦間期に求めたが、その結果、ドイツ本国では忘れられ、わが国ではこれまで知られることのなかったエーリヒ・ケストナー以外の両大戦間期ドイツ児童文学の作家・作品の発掘につながった。家族をめぐる近現代ドイツ児童文学史研究の空白を埋めることができたことは、本研究成果の学術的意義として挙げられよう。
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