研究実績の概要 |
今年も引き続きフローベール文学の倫理的宗教的側面位光をあてる研究を続け、その成果の一端は日本フランス語フランス文学会欧文学術誌 Littera にフランス語論文として掲載された。Kazuhiro Matsuzawa、”La transformation interieure de Madame Aubain dans ”Un coeur simple” de Flaubert”, Littera, Revue de Langue et Litterature Francaises, n.6, mars 2021, Societe Japonaise de Langue et Litterature Francaises, mars 2021, pp.87-101. この論文は、これまで冷淡な女主人としてみなされてきた『純な心』のオバン夫人が、献身的な女中フェリシテに次第に心を動かされ、しまいに困窮の中にあってもそれなりの年金を遺贈するに至るプロセスを、作家の草稿の分析を通して明らかにしたものである。フランス人のフローベール研究者を含む編集委員の高い評価を得ることができて、これまでにない新たな解釈を提示することができたことを確認できたことは、大きな成果であった。 またフローベール『サラムボー』の校訂版の詳細な書評を日本フランス語フランス文学会の書評 Cahier誌に発表した。松澤和宏、「Gustave Flaubert Reve d'Orient, Plans et Scenario de Salammbo, edition et introduction par Atsuko Organe, Droz, 2016.」, Cahier 2021年3月, pp.21-22. 2021年12月にパリで催される国際シンポジウム「フローベールとイメージ」に研究発表者として招待され、これを受諾した。 2019年に東北大で催された「語りと主観性」のシンポジウムの刊行に向けて論文の原稿を執筆した。刊行は 2021年度中の予定である。また現在『フローベール生誕二百年記念論集』(水声社より11月に刊行予定)を 2021年度中の刊行目指して編者として準備にあたっている。
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