研究課題/領域番号 |
18K00450
|
研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
亀井 一 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (00242793)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | アテネウム / 断章 / 一般学芸新聞 / 知識の体系 / 初期ロマン派 / 啓蒙主義 / ジャン・パウル / ノヴァーリス |
研究実績の概要 |
当初計画では、2021年度(研究第4年度)には、『朝刊新聞』の調査が当てられていた。しかし、コロナ・ウィルス感染拡大の影響で、マールバハのコッタ・アルヒーフ調査を断念せざるを得なかったこともあり、結局、第3年度の初期ロマン派研究をさらに進めるとともに、第5年度予定のジャン・パウルの文学テクストと同時代批評の関係を調査することになった。 初期ロマン派は、文学史的には、ヴァイマールの古典主義者と対比して、イエナで活躍した一世代若い詩人、批評家とされている。しかし、新聞・雑誌という観点に立つと、初期ロマン派とは『アテネウム』誌(1798 - 1800)周辺の若き知識人たちであり、同じイエナを中心とする『一般学芸新聞』の対抗勢力ということになる。『一般学芸新聞』は人文科学、自然科学の全分野を対象に書評を手がけている。後年、J・S・エルシュは、1785年から1800年までの書評を分類・整理して、『一般文献一覧』(『一般学芸新聞』編集部で発行)にまとめているが、このような体系化は、「一般」を謳う書評誌の目指すところでもあった。対して、『アテネウム』には「断章」が寄稿された。しかし、これらの「断章」が、エルシュの網羅的な知識の分類・整理とは違った方法で、知の体系化を目指していたことは、ノヴァーリスの『一般草稿』によく表れている。以上のような仮説に基づいて、『一般草稿』、さらに、ノヴァーリスの数学研究を調査した。 ジャン・パウルの同時代批評は、ジャン・パウル年鑑13号(1978)、16号(1981)、18号(1983)、23号(1988)、24号(1989)、40号(2005)に収録されている。ラファーター=メンデルスゾーン論争、汎神論論争の分析では、時系列に沿って論点を整理したが、本研究でも同じ手法を採用することにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
『朝刊新聞』調査を先送りすることになったが、研究自体は進んでいる。しかしまた、全体として、コロナ対応に手を取られ、十分な研究時間をとることができなかったことも否めない。研究最終年度に向けて、研究成果発表の準備ができていない。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は研究期間最終年度にあたるので、これまでの研究の総まとめとなる。 まず前年度に取り組んだ『一般学芸新聞』と『アテネウム』の調査、さらに、ノヴァーリスの数学研究についての考察を、研究発表、あるいは、論文として公表する。ノヴァーリスの数学研究の重要性については、すでにケーテ・ハンブルガーが1929年の論考で指摘している。カントが、数学をアプリオリな総合判断として純粋理性判断のモデルにしているように、ノヴァーリスの数学研究は彼の魔術的観念論の基礎となっているというのである。近年では、フランチスカ・ボムスキーが、ノヴァーリスの文学と思索における数学をテーマに研究書を出している。本研究では、これらの先行研究を参照しつつ、断片と総合の関係を焦点にして、このテーマに取り組むことになる。 研究期間第4年度では、同時代批評においてジャン・パウルのテクストがどのように評価されてきたのかを調査してきたが、今年度はそれに併行して、ジャン・パウルのテクストにおいて同時代批評がどのような役割を果たしたのかを調査する。従来のジャン・パウル研究では、特に晩年の作品について「自己パロディ」がテーマになっていた。同時代批評が鏡のような役割を果たしているとすれば、隣接するテーマと考えることができる。 当初計画の4年度に予定されていた『朝刊新聞』研究は未着手の状態であるが、『朝刊新聞』の発刊が、時期的にジャン・パウル晩年の創作期と重なっていることもあり、同時代批評の調査につなげて、なんらかの研究成果を残すことを目指したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ドイツ・マールバハ図書館での調査が実現できなかったため。なお、繰越金額は前年度に比べて減っている。
|