研究課題/領域番号 |
18K00451
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
植 朗子 神戸大学, 国際文化学研究科, 協力研究員 (20611651)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 植物民俗学 / 民間療法 / ドイツ伝説集 / グリム兄弟 / ハインリッヒ・マルツェル |
研究実績の概要 |
1年目は、8月にドイツのベルリン大学附属植物園で調査を行なった。資料室では植物分類学に関する資料を確認し、植物園では伝承に登場する植物の実物を確認し、それらの外見的特徴について調査をすすめた。成果として、Arzneipflanzenkunde und Aberglaube in der botanischen Volkskunde(『神話研究』京都府立大学学術報告 、23-27頁、 2018年9月)を論文として発表した。そして、研究内容の一部を周知するため、和歌山日独協会2018年度総会において、記念講演会を行い、『ドイツ語圏の植物の迷信と薬用効果』( 2019年3月28日 和歌山日独協会)で研究活動を報告した。 現在も引き続きおこなっている作業として、グリム兄弟のDeutsche Sagen(『ドイツ伝説集』)の植物の伝承の内容および名称の確認、既存の植物名の和訳の整理をしている。土地伝説集における植物伝承の整理は完了したため、その注釈を執筆中である。2年目にその内容を論文として、Flaschenpost(ゲルマニスティネンの会)に発表することを予定している。Woerterbuch der deutschen Pflanzennamen, Leipzig, 1943.と、以上の調査内容との検討がまだ進んでいないため、2年目の計画と並行して行う。 上記の研究実績の中で、「植物の薬用効果に対する人々の期待」が植物の迷信に見られること、現在の薬用植物商品(ハーブティー、塗り薬、抗うつ剤)の広告にも、16世紀以前の植物の神話的イメージが見られることが明らかになった。医薬品については、それらの情報は削除されているが、健康食品として販売されているものには、「植物のイメージ」が利用されており、現代の代替医療と植物の迷信との関連についての調査の継続の必要性を確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
調査報告の取りまとめを2019年2・3月に行う予定だったが、計画時よりも項目を増やしたため、予定よりも遅れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
グリム兄弟『ドイツ伝説集』Deutsche Sagenにおける植物伝説の調査内容と、Woerterbuch der deutschen Pflanzennamen, Leipzig, 1943.(ハインリッヒ・ マルツェル『ドイツ植物名辞典』、4巻本+索引)に関する論文を2019年度に発表する。同時に、2年目の計画である、グリム兄弟『子どもと家庭のためのメルヒェン集』Kinder- und Hausmaerchen (通称『グリム童話集』)における「樹木」に関する伝承を、伝説集の内容と比較し、論文をまとめる。Botanischer Garten der Universitaet Zuerich(チューリッヒ大学附属植物園)で、伝承記録の植物の外観、分類学上の特徴を調査する予定である。
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