研究実績の概要 |
2021年度までの新型コロナウィルスの影響によって実施できなかった海外調査、国内調査の計画は、規模を縮小して2022年度に変更した。コロナの影響が軽減した2022年9月には、ヴュルツブルク大学で医療史と薬草治療に関する資料調査を行った。ハイデルベルク薬事博物館では、薬用植物の調査、植物の表象に関する資料を記録した。この調査において必要だった資料書についても入手できており、予定していたよりも十分な資料収集成果となった。 2022年は共著『人はなぜ神話〈ミュトス〉を語るのか ―拡大する世界と〈地〉の物語』(植朗子、清川祥恵、南郷晃子編、文学通信、2022年)の第4章に「近代植物学に生きつづける神話・伝承文学――二〇世紀ドイツの植物学者ハインリッヒ・マルツェルを中心に」を執筆した。また、2023年5月現在、初校まで完成している共著『死の神話学』(木村武史編、晶文社、2023年刊行予定)にも研究成果第12章を担当し、「不死・転生・輪廻と植物の表象」について論じている。 ハインリッヒ・マルツェルのWoerterbuch der deutschen Pflanzennamen, (Leipzig, 1943)とGeschichte und Volkskunde der deutschen Heilpflanzen,(Stuttgart, 1938)の内容をおもに使用している。2022年度の海外調査で入手した文献と資料をもとにした論文は、2023年度中に日本独文学会および社会文化学会に投稿予定である。『ドイツ語圏の植物伝承と近代植物学』という書籍の企画が進んでおり、それらについても成果をまとめる予定である。関連して、日本のポップカルチャーに影響を与えている、ヨーロッパの植物伝承についても口頭発表、論文投稿を行う。
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