研究課題/領域番号 |
18K00453
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
由比 俊行 岡山大学, 全学教育・学生支援機構, 准教授 (90737090)
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研究分担者 |
熊谷 哲哉 近畿大学, 経営学部, 准教授 (20567797)
藤原 美沙 京都女子大学, 文学部, 講師 (20760044)
宇和川 雄 関西学院大学, 文学部, 准教授 (30779385)
福岡 麻子 東京都立大学, 人文科学研究科, 准教授 (40566999)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | オリジナル / 複製 / 分身 / 心霊主義 / ポスト複製論 / 作者性 |
研究実績の概要 |
本研究は、近現代ドイツ語圏文学の作家たちのテクストにあらわれる「複製」や「分身」、「亡霊」等の主題群の分析を通じて、唯一真正な「オリジナル」という近代的価値観にたいして作家たちがいかなる態度を取ったのかを明らかにし、「オリジナル」と「複製」をめぐる言説の歴史的変遷を跡づけようとするものである。3年間の共同研究の最終年度にあたる令和2年度は、当初の研究実施計画に基いて、各メンバーがシンポジウム開催に向けて準備を進め、日本独文学会秋季研究発表会(2020年11月22日オンライン開催)におけるシンポジウムでこれまでの研究成果を発表した。 由比(研究代表者)は、クライストの戯曲を題材に、1800年前後における近代的オリジナリティの観念と「分身」モチーフとの関連を考察した。シュトルムの作品を取り上げた藤原(研究分担者)は、「記録」と「記憶」による事後的な「オリジナル」形成の問題に光を当てた。熊谷(研究分担者)は、カール・デュ・プレルのドッペルゲンガー研究を手がかりに、メディアによる複製・通信技術の発達と19世紀末の心霊主義の言説の関連を明らかにした。宇和川(研究分担者)は、ボリス・グロイスのベンヤミン解釈に注目し、コピーにオリジナルの「アウラ」を纏わせる「歴史」の問題を考察した。「作者性」という観点から現代の「オリジナル」と「複製」の問題圏を考察した福岡(研究分担者)は、クレメンス・J・ゼッツの作品を手がかりに、オリジナル性への拒絶と執着がせめぎ合う創作実践のあり方を浮き彫りにした。 シンポジウムでは、コロナ禍における「オリジナル」と「複製」の問題をめぐっても活発な議論が交わされ、本研究のテーマの広がりとアクチュアリティがあらためて確認された。しかし同時に、新たな関連領域や研究課題も発見されたため、さらに共同研究を継続することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Zoomによるリモート会議やメール連絡によって、メンバー間で問題意識を共有しつつ、当初の計画に沿ってシンポジウムを開催することができた。「スケジュール」という点では、研究はおおむね順調に進展したと考える。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、「スケジュール」面では研究はおおむね順調に進展したが、新型コロナウィルス感染症流行のため、予定した研究・調査活動の一部は制限されることになった。また、成果発表を行ったシンポジウムにおいて、新たな課題も発見されたため、研究期間を1年延長し、本研究のさらなる深化を目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初はドイツ語圏各都市における資料収集を予定していたが、新型コロナウィルス感染症流行のため海外渡航が不可能となり、請求した旅費・物品費の一部が未使用のまま残った。次年度は、当該助成金を有効に活用して文献調査等を行い、研究活動の充実を図る。
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