研究課題/領域番号 |
18K00455
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉井 亮雄 九州大学, 人文科学研究院, 特任研究員 (40200927)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アンドレ・ジッド / フランス文学 / ジャーナリズム / 受容 / 1920年代 / 実証研究 |
研究実績の概要 |
当初の計画どおり、本年度の研究作業は、基本的に昨年度までのそれの継続・深化であった。すなわち、アンドレ・ジッドが収集した彼自身に関する新聞・雑誌類の記事・書評(パリ大学附属ジャック・ドゥーセ文庫に保管された総数約 3,500点)のうち、1920年代に発表された約660点の通時的分析を続行し、これをほぼ完了した。具体的な分析作業は主として次のふたつからなる。第一は、上記のテクスト群を年代順に通覧し、記述内容の傾向と変化・推移を把握することであり、第二は、これらのテクストに関連する書簡をジッド研究者用に作成された膨大な電子データ(非売版)を検索・参照しながら、各記事・書評が発表された背景・経緯を探ること、である。以上の分析作業と調査をつうじて、ジッドを評する媒体もそれまでのような文芸紙誌ばかりか、広い読者層を対象とする一般紙誌へと拡大してゆくこと、またそれとともに執筆者も作家や文芸評論家にくわえ、全般的な題材を扱う思想家やジャーナリストたちが多数参入し、その結果、文学的・美学的な紹介や評価記事と、思想的・倫理的な、場合によっては党派的な論評・批判とが急速に混在してくることが、昨年度にましていっそう具体的なかたちで把握できた。別言すれば、第一次大戦後のこの時期にいたって初めてジッドの存在が広く社会全体の「事象」となったことをあらためて確認したのである。以上の成果にもとづき、最終年度(当初4年間の計画を1年延長)の研究作業についても、さらに明確な指針を策定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように、ジッド自身が収集した新聞・雑誌類の記事・書評のうち、本研究が考察の対象とする1920年代発表の約660点については、これまでの数度の現地調査をつうじて網羅的に出典一覧を完成しており、また写真・フォトコピーやパソコン入力によりすべてのテクストデータを入手している。くわえて、それらのデータの分析作業もおおむね順調に進展している。具体的な成果としては、科研費補助金(研究成果公開促進費・学術図書)を受けて2019年に公刊した著書『ジッドとその時代』(総頁数674)、2021年にフランスで出版した『アンドレ・ジッド研究書の年代順書誌』(総頁数174)に続き、当該研究課題に直接・間接に関係する題材について学術論文3点を公表した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに入手した記事・書評の分析をさらに徹底・深化することと、調査対象をジッドが同時代の批評家・ジャーナリストと交わした書簡等にも広げ、実証的な精度をさらに高めたい。そのためにパリ大学附属ジャック・ドゥーセ文庫やフランス国立図書館など、フランスでの現地調査(我が国では入手難の定期刊行物や関連の未刊資料の閲覧など)を行う予定であったが、引き続く新型コロナウイルスの影響のため、現時点ではフランス出張は躊躇される状況が続いている。このような事態をカバーするため、少なくとも新年度の前半は収集したテクストの分析を続け、研究課題について実質的な総括を目指す。なお、可能な状況が訪れ次第、フランスでの現地調査を行う予定だが、そのさいの時間的ロスを防ぐべく、参照予定の未刊書簡類についてはすでに所蔵機関や遺産相続人・版権保有者からの閲覧許可を取得済みである。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由は、未刊書簡を中心とするフランスでの調査を予定していたが、新型コロナウイルスの蔓延継続によって、旅費・滞在費に当てる予算執行を行うことができなかったため。状況が改善次第あらためて現地調査を行う予定であるが、それが困難である場合は、フランス国立図書館などへの写真複製の依頼・購入や、現地在住の研究者に調査を委託するための謝金に充当したい。
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