研究課題
基盤研究(C)
アンドレ・ジッド(1869-1951)はかなり早期から自身に関する記事や書評を収集していたが、とりわけ第一次大戦後は組織的な収集に努めた。これらの資料はやがて忘れられてゆく二次的な情報と見なされがちだが、実際にはその時々の具体的証言として、緩やかに、だが確実に同時代の受容状況に関与していたのである。これら当該時期の記事・書評(計666点)を対象とする本研究によって、1920年代にいたってジッドの存在がついには広く社会全体の事象となるにいたったことを確認した。
フランス文学
後世の評価が定まり、文学史に特筆大書される存在となった作家といえども、存命中は同時代の評価に対し決して超然としているわけではない。とりわけその後半生において広範かつ甚大な影響力を及ぼし、また自らも時代の刻印を留めつづけたジッドが、ジャーナリズムを介して結んだ社会との関わりを探ることは、様々な〈関係〉の希薄化が指摘・危惧される今日、ひとり特定の作家にとどまらず、人文学研究の本質にも繋がりうる問いでもある。