研究課題/領域番号 |
18K00456
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
清水 まさ志 鳥取大学, 地域価値創造研究教育機構, 准教授 (90762047)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ボードレール / 悪の華 / 北方 |
研究実績の概要 |
令和2年度は、所属機関の変更に伴い研究環境が大きく変わり、研究の進捗に少なからず影響がでた。さらにコロナ禍によって移動が制限され、フランスへの出張調査をあきらめなければならなかった。そのため、地道に研究自体は進めたが、研究論文、研究発表を行うことができず、期間の延長を申し出ることとなった。 この間進めていた研究としては、まず『悪の華』の「スプリーンと理想」に含まれる芸術詩群に関して、それぞれの詩を詳細に分析することで、この詩群のなかに「北方」/「南方」という地理的・歴史的構成原理が含まれることを確証することができた。また芸術詩群に引き続く恋愛詩群、特に3人の女性に捧げられた詩篇を詳しく検討した結果、それぞれの女性の描かれる特徴が、この「北方」/「南方」という地理的・歴史的観点と密接な関連があることを突き止めることができた。ボードレールにとってこの地理的・歴史的観点は、それぞれの風土と時代によって美が多様に表現されてきたという、スタンダールから受け継いだ美の相対主義を具体的に表すものであり、さらに女性の美しさと魅力がそれぞれの風土と時代が持つ美と魅力を体現し表現するものであることを端的に表すがゆえ、詩集の構成原理として取り入れたと考えられる。しかしこの観点がこれまでボードレール研究においてほとんど注目されてこなかったのは、この観点がボードレール以前のロマン主義の影響を感じさせるため、さらにボードレールの革新性を「現代性」、すなわち時代的側面ばかり強調してきたためだろうと考えられる。こうした研究成果は延長した次年度において研究論文などとして公表していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
業績としてはなかったが、研究自体は着実に進められている。特に研究課題の中心をなし、令和元年度に予定しながら十分に進められていなかった、『悪の華』の「スプリーンと理想」に含まれる恋愛詩群の分析に関して大きく進めることができた。また平成30年度に予定していた『悪の華』の「スプリーンと理想」の芸術詩群に関する分析も進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1年間の延長期間を最大限に利用して、令和2年度に進めた研究の成果を研究論文や研究発表として公表し、また令和2年度に予定していた『悪の華』の「パリ情景」の分析を進めることで、この研究課題に関して全体的にまとめることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で渡航が制限され、フランスにおける研究調査を行うことができなかったため。予定通りフランスにおいて研究調査を行うため使用する。
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