本研究では、ドイツ語圏で1770年代以降急速に内面描写についての理論が発達したことに注目し、なぜ内面が言語的な表現の対象になったのかを各種文献の分析によって考察した。 内面描写をするためには、人間が社会階級や身分の類型としてではなく、個人という独立した存在であり、その内面は他人から察することができず説明を要するという前提がなければならない。ボードマーとブライティンガーの著作やクラデニウス『一般歴史学』(1752)、ヴィーラントの『ドン・シルヴィオ』などを通して、18世紀半ば頃からドイツで想像力がようやく明確に認識されるようになり、個人の内面が文学の描写の対象として理論化されたことがわかった。
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