研究課題/領域番号 |
18K00459
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
杉山 有紀子 慶應義塾大学, 理工学部(日吉), 助教 (70795450)
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研究分担者 |
日名 淳裕 成城大学, 法学部, 専任講師 (40757283)
前田 佳一 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (70734911)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | オーストリア / 国民意識 / 故郷 / 雑誌文化 / アイデンティティ / 亡命 |
研究実績の概要 |
本研究課題は20世紀前半から中盤にかけてのオーストリア文学における「故郷」概念の形成と展開、及びその歴史的・文化的文脈を分析することを目的とし、初年度は各研究者の従前からの関心に基づき専門とする作家の文献読解と分析を行った。 杉山は二つの観点から研究を進めた。一方ではシュテファン・ツヴァイクによる戦間期及び亡命後における「オーストリア」の主題化について考察した。他方では聖歌「Stille Nacht」とザルツブルク待降節音楽祭における「伝統」の称揚を例とし、オーストリアの地方文化が戦後国民アイデンティティの再構成に果たしてきた役割を分析した。いずれも2019年度に口頭及び論文での成果発表を予定している。 共同研究者は戦後のウィーンを中心としたオーストリア像の文学的表象とその背景の分析に取り組んだ。日名はイルゼ・アイヒンガーの散文詩の分析を通して、彼女のウィーン表象の特性を明らかにし、その成果論文が2019年3月に発表された。前田はマックス・メル、ハイミート・フォン・ドーデラー、及びインゲボルク・バッハマンの小説及び詩を題材に、戦後オーストリアの旧世代と新世代の作家におけるオーストリア並びにウィーン像の比較研究を行い、口頭及び論文として発表した。 なお、以上の研究に関連して、2019年2月に全員がオーストリア出張を行い、オーストリア国立図書館・ウィーン国立図書館・ザルツブルク大学図書館での手稿閲覧、資料収集を行った。杉山はザルツブルク大教授及びザルツブルク待降節音楽祭総監督との面会、意見交換を実施し、前田及び日名は2019年度に実施予定の国際コロキウムに招聘予定のウィーン大教授2名を訪問、本研究課題に関する意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度内の口頭及び論文発表に至らなかった研究者も含め、文献収集及び論文の執筆は進行しており、参加者全員で定期的に進捗状況の報告及び意見交換を行っている。2019年秋のシンポジウムは当初予定通り開催の見込みで、さらに共同研究者の都合により、申請時には2020年度実施予定としていた国際コロキウムを2019年度内に実施することとした。これらの実現に向けてのテーマ選定はおおむね完了し、全員が定期的な共同研究会での研究構想の相互検討、招聘予定教授とのコンタクト等を続け、順調に準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年10月の日本独文学会秋季研究発表会において、杉山、前田、日名に外部より1名を加えて、「オーストリア文学における『故郷』と『虚構性』の問題(仮)」をテーマにシンポジウムの開催を目指している。杉山がシュテファン・ツヴァイクの自伝『昨日の世界』における故郷としてのオーストリア表象、日名がゲオルク・トラークルの戦争詩、前田が戦後オーストリアの小説作品を題材に発表予定である。また2020年3月に都内大学にて、オーストリアの大学教授2名を招聘し、「オーストリア戦後文学の文化的機能(仮)」をテーマとした国際コロキウムの開催を予定している。以上の成果を2020年度中をめどに論文にまとめ発表することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費が当初予定より若干少額で納まったため余剰が生じた。来年度はシンポジウム及び国際コロキウムの開催に際し、旅費の一部及び会場費等に当該金額を充当し、翌年度請求分と共に使用する。
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