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2020 年度 実施状況報告書

20世紀オーストリア文学における「故郷」理念と国民意識の展開

研究課題

研究課題/領域番号 18K00459
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

杉山 有紀子  慶應義塾大学, 理工学部(日吉), 講師 (70795450)

研究分担者 日名 淳裕  成城大学, 法学部, 准教授 (40757283)
前田 佳一  お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (70734911)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワードオーストリア文学 / 戦後文学 / 故郷 / 亡命文学 / 国民意識
研究実績の概要

2020年度はオーストリアへの渡航が困難な情勢であったため、出版されたテクストを主な対象として作品分析及び時代背景の解明に焦点を当て、3名が以下の通りそれぞれ本課題のテーマである「故郷」の表象という観点から研究を進めた。

研究代表者はシュテファン・ツヴァイクの戦間期の小説における帝国ウィーンの表象、及び彼の自伝の戦後オーストリアにおける受容、そこに見出された戦後のオーストリア・イメージについての研究を行った。研究分担者(1)はゲオルク・トラークルとヨーゼフ・ヴァインヘーバーの戦後における受容についての研究、またイルゼ・アイヒンガーの詩に現れるモティーフの分析・解釈を行った。研究分担者(2)はインゲボルク・バッハマンと戦後オーストリアの文学界について、またゲアハルト・フリッチュの小説に関する研究を行った。

研究代表者及び分担者3名は、共通する分野の研究者らとも協力してオンラインで定期的な読書会及び勉強会を実施し、上記研究に関わるテクストの輪読と解釈、文献情報の共有、及び研究発表に向けての準備を進めた。
2020年10月にオンラインで「戦後オーストリア文学研究会第1回コロキウム」を開催し、研究代表者及び分担者2名がそれぞれ研究発表を行った。2021年度中にその内容をまとめた論文を所属学会の機関誌等にて発表する予定である。また2021年3月には同コロキウムの第2回にて、隣接する研究テーマを有する研究者3名を発表者に迎え、共に議論を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究責任者、分担者とも2020年度に予定していたオーストリアでの調査研究を断念せざるを得なかったため、現地の資料や展示等を用いての研究を十分に行うことはできなかったが、関連するテーマで日本国内での研究を進め、予定通り秋~冬の研究発表会(オンライン)における口頭発表、そしてその後の論文発表に向けた準備を進めることができた。

今後の研究の推進方策

前年度の口頭発表に基づく論文を学会誌等に発表することを予定して各自準備を進めている。また昨年度同様、2021年秋と2022年春にシンポジウム(必要に応じてオンライン)を開催し、全員がいずれかにおいて1回以上の口頭発表を行い、その成果を論文としても公表することを予定しており、これに備えた勉強会も定期的に実施する。

研究代表者は、特に2020年度からの対象であるザルツブルク音楽祭関連の研究に関して、ヨーロッパへの渡航が再び可能になれば、できるだけ早く現地の図書館、アーカイブ、劇場公演、展覧会等の取材を再開し、一次資料に基づく研究に着手したいと考えているが、もし今年度中にそれが困難な場合は、日本国内にある関連資料・文献の分析と解釈をまずは行っていく。同様に研究分担者も、オーストリアのアーカイブを訪問可能な状態になり次第、雑誌や直筆原稿等も取り入れていく予定であるが、これが不可能な場合は出版されたテクストを中心にさらなる分析・解釈を進めていく。

次年度使用額が生じた理由

2020年度中にオーストリアでの現地調査・研究を計画していたが、新型コロナウィルス感染症拡大に伴う渡航制限のため不可能になり、旅費に未使用分が生じた。また海外や地方などからの資料購入・取り寄せに制限が生じたこともあり、国内で出版済の資料に基づく研究に重点を移したことで物品費も予定より少額の支出となった。
2021年度は海外渡航が可能になればオーストリアに渡っての研究を進める予定である。また海外との物流もある程度の回復が見込まれるので、特にヨーロッパからの資料購入に関連する支出を予定している。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] シュテファン・ツヴァイク『未知の女の手紙』に見る幻想のウィーン2021

    • 著者名/発表者名
      杉山有紀子
    • 雑誌名

      慶應義塾大学日吉紀要 ドイツ語学・文学

      巻: 61 ページ: 1-18

  • [雑誌論文] 損傷した物語-ゲアハルト・フリッチュ『ファッシング』における断片性の詩学2020

    • 著者名/発表者名
      前田佳一
    • 雑誌名

      詩・言語

      巻: 87 ページ: 87-99

    • 査読あり
  • [雑誌論文] インゲボルク・バッハマンのオーストリア表象ー『湖への三つの道』を中心に2020

    • 著者名/発表者名
      前田佳一
    • 雑誌名

      日本独文学会研究叢書

      巻: 141 ページ: 60-73

  • [雑誌論文] ゲオルク・トラークル「最後の詩」における祖国の死と故郷の再生2020

    • 著者名/発表者名
      日名淳裕
    • 雑誌名

      日本独文学会研究叢書

      巻: 141 ページ: 6-19

  • [雑誌論文] "...dieses kleine Land - zufaellig mein Heimatland - “ ―シュテファン・ツヴァイク『昨日の世界』における「故郷」としての オーストリア2020

    • 著者名/発表者名
      杉山有紀子
    • 雑誌名

      日本独文学会研究叢書

      巻: 141 ページ: 47-59

  • [学会発表] 1945年以後のオーストリア文学における「オーストリア的なるもの」の象徴化と神話化2020

    • 著者名/発表者名
      前田佳一
    • 学会等名
      戦後オーストリア文学研究会第1回コロキウム
  • [学会発表] イルゼ・アイヒンガー『贈られた助言』における「錆」の主題2020

    • 著者名/発表者名
      日名淳裕
    • 学会等名
      第11回日本独文学会関東支部研究発表会
  • [学会発表] ヨーゼフ・ヴァインヘーバー『ここに言葉がある』における「オーストリア的なるもの」2020

    • 著者名/発表者名
      日名淳裕
    • 学会等名
      戦後オーストリア文学研究会第1回コロキウム
  • [学会発表] 1945年以降のオーストリア文学におけるシュテファン・ツヴァイク受容 ―Persona non grataから「昨日の世界の作家」へ―2020

    • 著者名/発表者名
      杉山有紀子
    • 学会等名
      戦後オーストリア文学研究会第1回コロキウム

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公開日: 2021-12-27  

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