研究課題/領域番号 |
18K00460
|
研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
小椋 彩 東洋大学, 文学部, 助教 (10438997)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 亡命ロシア / 亡命ポーランド / フィロソフォフ / チャプスキ / レーミゾフ |
研究実績の概要 |
初年度は、本プロジェクトの前身の「ポーランドの亡命ロシア」から継続する形で研究を進め、以下の場で成果を公開した。4月、英国スラヴ東欧学会年次大会(ケンブリッジ)で、発表「ヘテロトピアとしての亡命コミュニティ:レーミゾフの場合」を行った。8月、国際スラヴィスト会議(ベオグラード)で、発表「チャプスキとレーミゾフ:亡命時の交友関係」を行った。10月、分担研究者を務める科研費プロジェクト「東欧文学の多言語的トポスをめぐる研究」(代表者・井上暁子)主催の国際シンポジウム(東京大学本郷キャンパス)で、発表「ワルシャワの亡命ロシア」を行った。11月、ポーランド独立100周年記念学会(城西大学紀尾井町キャンパス)で発表「「亡命作家」ゴモリツキのアイデンティティをめぐって」を行った。いずれも、研究の蓄積の浅い「戦間期ポーランドの亡命ロシア」についての実態を様々な角度から具体的に明らかにする試みであり、現在論文化の最中である。 また、2月に、共同研究者であるピョートル・ミツネル氏(ステファン・ヴィシンスキ枢機卿大学教授)をワルシャワから招聘し、早稲田大学にて講演会「ポーランドの亡命ロシア」を開催した。亡命ポーランド・ロシアの比較文化研究の第一人者を招き、氏の最近の研究成果を共有できた意義は大きいと考える。 このほか、7月、北海道スラヴ研究会(北大スラブ・ユーラシア研究センター)にて、「日本におけるロシア・モダニズム受容:レーミゾフの場合」を行い、亡命作家アレクセイ・レーミゾフを中心にしたロシア・モダニズムの、明治から昭和初期の日本における受容状況について、これまでにモスクワほかで実施したアーカイヴ調査の成果を踏まえて紹介した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2015年に開始した「ポーランドの亡命ロシア」研究プロジェクトと連動させ、4回の学会発表と2回の招待講演を行った。また、亡命ロシアと亡命ポーランドの比較文化研究の第一人者であるピョートル・ミツネル氏を招聘し講演会を開催した。以上の場でのディスカッションで得た示唆をもとに、現在、ワルシャワの亡命ロシア文化に関する論文化に取り組んでおり、本研究はおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は20世紀前半ポーランドの、亡命者を含む芸術家による「場所」の経験の芸術への投影を言語テクストおよび視覚芸術作品の中に追うもので、とくに、同じスラヴ語圏に属す隣国ロシアのモダニズムと照らして検討することで、ポーランド文学研究やヨーロッパ・モダニズム研究に新しい知見をもたらすことを目指している。今後、亡命ポーランド最大の雑誌「クルトゥラ」編集に大きな役割を果たした画家・文芸評論家ユゼフ・チャプスキの、とくに戦後パリで執筆された評論の分析を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
11月に予定していた国際学会(ASEEES)への参加と資料収集(ともにアメリカ)を取りやめたため。取りやめた理由として、8月に参加した国際スラヴィスト会議(ベオグラード)でのディスカッションを踏まえて、より理論を深め論文化する必要があると考えた。次年度・翌年度使用額を合わせて、改めて、ロシアでの国際学会への参加を検討している。
|