ゲーテの『色彩論』(1810)におけるニュートンの『光学』(1704)にたいする批判を、図像を対象および手段とした論争としてとらえ、両者の著作の図版を、図法や技法、細部の描写などイメージに固有の要素に注目し、イメージ論の概念を用いて分析・考察した。その結果、両者の議論の科学的な内容とは別の次元でさまざまな主題が浮かびあがり、それらを通して、ゲーテとニュートンのあいだには、従来、テクストにもとづいた研究で指摘されてきたような対立関係には収まりきらない、差異と共通性が併存する複雑な関係が見いだされた。また、そこではイメージが論争の対象や手段であるだけではなく、主体にもなりうることも明らかになった。
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