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2020 年度 実施状況報告書

実存主義の惑星的展開----ジャン=ポール・サルトルと第三世界

研究課題

研究課題/領域番号 18K00462
研究機関立教大学

研究代表者

澤田 直之 (澤田直)  立教大学, 文学部, 教授 (90275660)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワードジャン=ポール・サルトル / 実存主義 / キューバ / カストロ / チェ・ゲバラ / ブラジル / 第三世界
研究実績の概要

第二次世界大戦後の世界に大きな影響を与えた作家・思想家ジャン=ポール・サルトルの文学と思想、およびフランス実存主義が1950年代から独立の機運が高まり、次第に独立を獲得していくことになる第三世界の知識人たちに大きな影響を与えたことは言うまでもない。しかし、実存主義のインパクトがどのようなものであったのかについては、いまだその全貌が解明されてきたとは言いがたい。そのためには、文献読解だけでは不十分であり、文献研究を実証的なアプローチと組みあせて考察することが必要である。本研究の目的はこのような立体的なアプローチにより、フランス実存主義が第三世界の知識人たちに浸透していく過程を実態を明らかにすることにある。
3年目にあたる2020年度は、引き続き膨大な資料を丹念に読み込み、整理する作業を行った。とりわけ、キューバおよびラテン・アメリカとの関係に焦点を当てて、1959年に起こったキューバ革命とその翌年のサルトルのキューバとブラジル訪問を中心に考察を行った。カストロやチェ・ゲバラとの直接交流の描写を含むキューバ滞在後のルポルタージュ『砂糖の上の嵐』は、単行本化されることがなく、邦訳もないが、その精読をとおして、サルトルとキューバ革命の関係を、同時代に発表された『弁証法的理性批判』も視野に入れて考察した。また、バルガス・リョサをはじめ南米の作家への実存主義への影響は以前から挙げられていたが、具体的な交流関係についてはまとまった研究がなかったので、当時の新聞や雑誌などにあたって、総合的な調査をおこなった。また、アルジェリア独立戦争とキューバ革命の同時代性についても考察を行った。当初は、文献解析を実地調査で裏付けるべくキューバとブラジルでフィールドワークを行う予定であったが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大のために、現地調査を実施することはできなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

予定していた文献収集、資料解析の作業は順調に進行している。一方、新型コロナウイルスの世界的な蔓延のため、予定していたキューバおよびブラジルでの現地調査は断念せざるをえず、収集した文献の分析に集中した。その結果、本研究の主軸のひとつである実証的な研究の部分は進捗が芳しくない。また、これもパンデミックの影響で、予定していた国際シンポジウムが開催できなかった。その意味で、研究はやや遅れていると言わざるをえない。その一方で、これまでと異なり、非フランス語圏における実存主義の影響の大きさを、スペイン語文献などを読み込む作業を通して、明らかにすることができ、本研究課題のフィールドが予想を越えて広範囲にわたることが実感された。また、影響問題をより多角的・重層的に捉えるために、戦前のサルトルの著作なども確認する必要があることがあらためて確認された。
今年度の成果としては、キューバ革命とサルトルの関わりを、とりわけキューバの作家たちとの交流に焦点をあてた形でまとめることができた(「サルトルと第三世界」)。カリブ海への実存主義のインパクトに関しては共同論集"Archipels Glissant"に、マグレブの知識人との関連では共同論集"Abdelkebir Khatibi, Quels heritages ?"と"Abdelkebir Khatibi, Postcolonialism, Transnationalism and Culture in the Maghreb and Beyond"に寄稿した論考によってその一端を示した。また、サルトルの初期の重要著作『イマジネール』の新訳を解説を添えて発表した。そのほか、日本にサルトルを紹介した加藤周一に関する国際シンポジウムの成果が『加藤周一を21世紀に引き継ぐために 加藤周一生誕百年記念国際シンポジウム講演録』として上梓された。

今後の研究の推進方策

最終年度にあたる今年度は、これまでの調査をまとめる作業に入る。ただし、予想していた以上に膨大な文献があったため、ラテンアメリカ世界、カリブ海、北アフリカ、それぞれの地域に関してまだ、文献の解析が終わっていない部分もあり、それを引き続き進めていきたい。当初、予定していた現地調査、国際シンポジウムの開催や参加は、新型コロナウイルスの世界的な感染状況が収まらない限り、不可能だと思われるため、当面は文献調査を中心にした成果をまとめる方向で考えていきたい。来年度以降、感染が収束した後に、国際シンポジウムなどを組織することにしたい。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大のために、予定していたキューバおよびブラジルでの現地調査が実施できなかったため。2021年度も、この地方での調査を行える可能性は低いため、実行できない場合は、フランスでの文献調査に切り替える。また、旅費の一部をデータベース構築に充当することも検討している。

  • 研究成果

    (19件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 図書 (6件)

  • [国際共同研究] モロッコ王立アカデミー(モロッコ)

    • 国名
      モロッコ
    • 外国機関名
      モロッコ王立アカデミー
  • [国際共同研究] 日仏会館・フランス国立日本研究所/パリ第8大学(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      日仏会館・フランス国立日本研究所/パリ第8大学
  • [雑誌論文] サルトルと第三世界(1)2021

    • 著者名/発表者名
      澤田直
    • 雑誌名

      『立教大学フランス文学』

      巻: 50 ページ: 33-59

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 「辻仁成『10年後の恋』」2021

    • 著者名/発表者名
      澤田直
    • 雑誌名

      『青春と読書』(集英社)

      巻: 56/2 ページ: 7

  • [雑誌論文] 「勝者なきゲーム」2021

    • 著者名/発表者名
      澤田直
    • 雑誌名

      『サルトル「墓場なき死者」』(有限会社オフィスコットーネ)

      巻: - ページ: (6-7)

  • [雑誌論文] L’ombre magrebine, Abdelkebir Khatibi et la culture japonaise2020

    • 著者名/発表者名
      Nao Sawada
    • 雑誌名

      Abdelkebir Khatibi, Quels heritages ?, Actes du colloque international, Academie du royaume du Maroc

      巻: - ページ: 117-125

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] ミシェル・ウエルベック『セロトニン』:ウエルベックの円熟2020

    • 著者名/発表者名
      澤田直
    • 雑誌名

      『図書新聞』

      巻: 3436 ページ: 1

  • [雑誌論文] 水野浩二『倫理と歴史:一九六〇年代のサルトルの倫理学』2020

    • 著者名/発表者名
      澤田直
    • 雑誌名

      『日仏哲学思想研究』

      巻: 25 ページ: 256-259

  • [雑誌論文] 「サルトルのイメージ論――『イマジネール』の新訳刊行にあたって」2020

    • 著者名/発表者名
      澤田直
    • 雑誌名

      『本』(講談社)

      巻: 45巻6号 ページ: 48-49

  • [雑誌論文] 「エリック・ヴュイヤール『その日の予定』」2020

    • 著者名/発表者名
      澤田直
    • 雑誌名

      『図書新聞』

      巻: 3439 ページ: 8

  • [学会発表] 「映画と人―危機のなかの映画」2021

    • 著者名/発表者名
      諏訪敦彦、クレモン・ロジェ、澤田 直、田坂博子
    • 学会等名
      恵比寿映像祭シンポジウム
  • [学会発表] 「生を与える : 家族と共同体」2020

    • 著者名/発表者名
      澤田直
    • 学会等名
      シンポジウム『共同体と贈与---ジョルジュ・バタイユの思想から』
    • 招待講演
  • [学会発表] 「サルトルのイメージ論:想像界と現実界 その境界はあるのか」2020

    • 著者名/発表者名
      澤田直
    • 学会等名
      日本サルトル学会
  • [図書] Pour une autre litterature mondiale : La traduction franco-japonaise en perspective ("Ouvrir, fermer, sur la difference entre traductions litteraires et philosophique"; "Postface")2021

    • 著者名/発表者名
      Nao Sawada, Cecile Sakai, Bernard Banoun, Anne Bayard-Sakai, Mathieu Capel, Corinne Quentin, Patrick de Vos, Atsushi Hiraoka , Toshiyuki Horie, Jacques Levy, Emmanuel Lozerand, Shiro Miyashita, Minae Mizumura, Yoshikazu Nakaji, Kan Nozaki, Dominique Palme, Yoko Tawada, Daniel Stuve, Kazuyoshi Yoshikawa
    • 総ページ数
      222 (183-197, 215-216)
    • 出版者
      Editions Picquier
    • ISBN
      9782809715194
  • [図書] Archipels Glissant (La pensee baorque chez Edouard Glissant, ou l’esthetique antillaise)2020

    • 著者名/発表者名
      Nao Sawada, Francois Noudelmann, Francise Simasotchi-Brones, Yann Toma, Dominique Berthe, Michael Dash, Rene Depestre, Souleymane Bachir Diagne, Edelyn Dorismond, Michael Ferrier, Mary Gallagher, Lise Gauvin, Satoshi Hirota, Samia Kassab Charfi, Dominique Labays, Eduardo Manet, Hiroshi Matsui, et al.
    • 総ページ数
      273 (163-175)
    • 出版者
      PU Vincennes
    • ISBN
      9782379240850
  • [図書] Abdelkebir Khatibi, Postcolonialism, Transnationalism and Culture in the Maghreb and Beyond ("Maghrebian Shadow : Abdelkebir Khatibi and Japanese Culture")2020

    • 著者名/発表者名
      Nao Sawada, Jane Hiddlston, Khalid Lyamlahy, Assia Belhabib, Jasmina Bolfek-Radovani, Dominique Combe, Rim Feriani, Charles Forsdick, Olivia C. Harrison, Debra Kelly, Lucy McNeece, Matt Reeck, Alison Rice, Andy Stafford, Edwige Tamalet Talbayev, Alfonso de Toro.
    • 総ページ数
      401 (219-233)
    • 出版者
      Liverpool University Press
    • ISBN
      9781789622331
  • [図書] 『加藤周一を21世紀に引き継ぐために 加藤周一生誕百年記念国際シンポジウム講演録』(「文学とは何か――加藤周一、サルトル、そして〈独自的普遍〉――」2020

    • 著者名/発表者名
      澤田直、三浦信孝、鷲巣力、樋口陽一、ピエール=フランソワ・スイリ、小熊英二、イルメラ・日地谷=キルシュネライト、水村美苗、ソーニャ・アンツェン、クリストフ・サブレ、ジュリー・ブロック、山元一、三浦篤、片岡大右、海老坂武、西谷修、白井聡、ソーニャ・カトー、奈良勝司、孫歌、池澤夏樹、李成市、林慶澤、王中忱、小関素明
    • 総ページ数
      456 (251-270)
    • 出版者
      水声社
    • ISBN
      9784801005136
  • [図書] 『洪水』2020

    • 著者名/発表者名
      フィリップ・フォレスト著、澤田直訳、小黒昌文訳
    • 総ページ数
      291
    • 出版者
      河出書房新社
    • ISBN
      9784309208053
  • [図書] 『イマジネール』2020

    • 著者名/発表者名
      ジャン=ポール・サルトル著、澤田直訳(解説)、水野浩二訳
    • 総ページ数
      463
    • 出版者
      講談社
    • ISBN
      9784065194386

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公開日: 2021-12-27  

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