研究課題/領域番号 |
18K00465
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研究機関 | 名古屋外国語大学 |
研究代表者 |
加藤 有子 名古屋外国語大学, 外国語学部, 准教授 (90583170)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ホロコースト / 記憶 / ポーランド文学 / 第二次世界大戦 / リアリズム / 原爆 / 写真 / ゲットー |
研究実績の概要 |
2019年度は、当初予定していた3つの小トピックについて、それぞれ並行して研究を進めた。 1. 戦後の日本とソ連・東欧という異なる地政学的文脈において、「アウシュヴィッツ・ヒロシマ」という平和主義的標語が同時的かつ相補的に使われていたことに注目し、「ヒロシマ」と「アウシュヴィッツ」を並置する連想の背景を調査した。この基礎的な調査は2016-2017年の国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)によるポーランド滞在時に行っており、今回はより本格的な論文に仕上げるために、国会図書館などの日本の資料を使い、日本におけるホロコーストの受容、日本とポーランドの文化的交流史、戦前・戦中のユダヤ人をめぐる言説のさらなる調査を行い、論文にまとめた。 2.第二次世界大戦の記憶構築に対するカラー写真および白黒写真の役割を考察するために、現存する原爆関連写真資料の所在、写真アルバムの流通など、基礎的な事項の調査と整理を行った。また、長崎原爆資料館を訪問し、専門学芸員の方から長崎の原爆関連の写真の所在や調査の状況について、詳しく話を伺うことができた。2020年度はアメリカで在外研究の予定であり、アメリカの公立アーカイヴにおける調査を効率的に進めるための準備にもなった。 3.ホロコーストや戦時の出来事の集合的記憶における非視覚的要素の役割について、ゾフィア・ナウコフスカ『メダリオン』におけるワルシャワ・ゲットーの描写を取り上げ、ビドゴシチ大学にて招待講演を行った。証言文学という枠組みを設定し、各種メディアの証言資料における非視覚的要素の描き方に注目するという切り口を定めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
事前に設定した3つの小テーマは、各年度ごとに割り振っていたが、相互に関連しているため、同時に少しづつ進める方法を取り、順調に進んでいる。2020年度にアメリカの研究機関で在外研究をすることになったため、2019年度は日本の資料を集中的に調査した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度はワシントンDCにあるアメリカ合衆国ホロコースト記念博物館の競争的フェローシップを獲得し、半年間在外研究することが決まった。その後の半年も、イェール大学のホロコーストの証言アーカイヴを利用して客員研究員として滞在することになり、海外の専門家と意見交換しながら、研究を進める。本研究に関する一次資料、二次資料が充実しており、特にポーランドに作られたゲットーの写真、アメリカ軍撮影の原爆写真の一次資料に集中的にあたり、整理、分析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
アメリカのアーカイヴ資料を調査する予定だったが、2020年度に同地で長期在外研究することになったため、この調査を来年度に回し、旅費が予定より少なくなった。2020年度のアメリカ滞在時に、調査旅行費として利用する。
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