研究課題/領域番号 |
18K00465
|
研究機関 | 名古屋外国語大学 |
研究代表者 |
加藤 有子 名古屋外国語大学, 外国語学部, 准教授 (90583170)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ホロコースト / カラー写真 / ゲットー / 証言 / 記憶 / ポーランド文学 |
研究実績の概要 |
今年度はアメリカでホロコーストの写真および証言の調査を行った。 1.アメリカホロコースト記念博物館(USHMM)で、ホロコースト関連のカラー写真の調査・研究を行った。コロナウィルスのため、3月半ばから博物館が閉鎖になったが、VPN接続を使用して、オンラインでのコレクション調査を進め(研究員としてアクセスできるコレクション資料の数は、一般公開のオンライン資料よりも10万点ほど多い)、ナチ・ドイツのカメラマンがバービー・ヤールの虐殺地で撮った写真、および占領地ポーランドのゲットーで撮ったカラー写真について調査し、研究発表を行った。主としてオンラインであったが、世界各地からやってきたホロコースト研究者や博物館の各アーカイヴ(図書資料、写真・映像、証言)のアーキヴィストとのミーティングを通して、自身の研究に対する貴重なフィードバックを得たほか、最新のホロコースト研究やそのテーマの広がりを把握し、自身の手薄だった領域の知識を得ることもできた。 2.イェール大学のホロコースト証言ビデオセンターの資料を使い、証言における感覚的記憶の研究に着手した。アーキヴィストとのセッションにおいて、感覚的記憶は手記など文学に多いという助言を得て、今年度は文学資料にあたった。方法論を含めたその展開は、来年度の課題である。 3.ホロコーストとヒロシマを併置する言説について、またポーランドにおけるホロコーストの記憶の現在について、昨年度集めた資料をもとに日本語で論考をまとめた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナウィルスの広がりにより、使用予定であったアメリカの複数の研究所が1年間完全閉鎖し、資料調査はVPN接続による自宅からのデジタルコレクション調査に限られた。想定外の状況であったが、オンラインで可能な調査、論文執筆作業を集中的に行った。しかし、依然として現地調査が必要なものがある。これらは来年度、パンデミックの状況を見つつ、進めたい。アメリカの研究所での調査と研究者との交流により、予想以上に膨大な数の関係資料が見つかり、設定した小トピックがより大きなテーマに展開する見込みである。パンデミックに加え、こうした新たな展開のために、当初の予想以上に時間がかかる可能性もあるが、研究自体は順調に進展、深化している。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度もアメリカのホロコースト研究機関で研究を行う。研究所やアーカイヴの再開後、研究者との交流、現地調査を進める。第一に、アメリカホロコースト記念博物館、イェール大学の証言アーカイヴを利用して、非視覚的な記憶の描写について、調査研究を進める。第二に、アメリカホロコースト記念博物館アーカイヴ調査によって見つけたナチ・ドイツカメラマンのカラー写真の3つのコレクションの分析を進める。第三に、アメリカ国立公文書館が再開次第、資料調査を行う。本課題の成果を一冊の本としてまとめるべく、理論的枠組みの再構築もはかる。2022年3月にはアメリカホロコースト記念博物館のアジアとホロコーストに関するワークショップに参加することになり、博物館で資料の追加調査を行い、口頭発表に向けて研究をまとめる。 当初予定では、まとめの年として、海外の研究者とのシンポジウムを行う予定だったが、コロナによるパンデミックの影響が長引き、往来に制限があり、十分な準備期間が取れないため、研究期間を延長し、再来年度に行うことも視野に入れている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスによるパンデミックのため、アメリカ国内の研究所・資料館が閉鎖し、旅行の制限により国内・国外の調査出張もできなかった。今年度に予定し、見送った調査およびそのための旅費を来年度に回す。
|
備考 |
新聞記事「歴史の中に位置づける」(「戦後75年記憶をつなぐ」下)『秋田魁新報』2020年8月14日
|