研究課題/領域番号 |
18K00465
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研究機関 | 名古屋外国語大学 |
研究代表者 |
加藤 有子 名古屋外国語大学, 世界教養学部, 准教授 (90583170)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ホロコースト / カラー写真 / 第二次世界大戦 / 記憶 / 証言 / ポーランド / ゲットー / 修正主義 |
研究実績の概要 |
昨年度からのパンデミックの影響を受けて予定を変更し、アメリカで在外研究を続けた。イェール大学マクミラン国際地域研究所ロシア東欧ユーラシア研究及びフォーチュンオフ・ホロコーストビデオ証言アーカイヴに客員研究員として所属し、研究者と意見交換を行い、ネットワークを構築しながら、イェール大学図書館、イェール・アート・ギャラリー、バイネッキ図書館、フォーチュンオフ・アーカイヴの資料を用いて、ホロコーストをめぐる非視覚的記憶の表現、ホロコーストの写真とリアリティの問題、反ユダヤ主義言説と同時代の人種言説の関連性等の調査を進めた。 ホロコーストの写真の研究は、占領下ポーランドのゲットーの写真に対象を絞り、ニューヨークのYIVOユダヤ研究所、ワシントンDCのアメリカ・ホロコースト記念博物館シャペル・センターの現物資料及びマイクロフィルムで調査を進めた。これまではワルシャワ・ゲットーの写真を調査してきたが、ゲットーの写真においても特殊な位置を占めるウーチ・ゲットーの調査を進めた。 メリーランド大学図書館では、連合軍占領期日本の検閲資料を集めたプランゲ・コレクションを用い、検閲と戦後の平和主義言説の形成との関係をめぐる研究の予備調査を始めた。占領期に日本に滞在したアメリカ人の撮った写真コレクションをカラー写真を中心に調査した。 日本語では、本研究課題に先行する国際共同研究加速基金のまとめ論集を、本研究課題の成果論文も加えて刊行した。英語では、ワルシャワ・ゲットー蜂起の写真と文学における記憶についての論文を、分担執筆のかたちで書籍として刊行した。カラー写真については、ハレ大学ブリュックナー研究センターのセミナーで、ポーランドにおける黄禍論と反ユダヤ言説についてはヨーロッパの大学のポーランド研究の学会で報告した。ホロコーストの音の記憶について、スイスの研究チームとオンラインで意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パンデミックの影響は多少あったものの、アメリカでの在外研究を通し、現地アーカイヴでの資料収集を進め、国際的な研究上のネットワークを構築することができた。数年前に発表した論考を現在の知見から推敲し、刊行することができた。アメリカのアーカイヴも再開し、目的としていた現物資料を参照、調査することがほぼできた。一部、まだ研究者にも公開されていない資料については、来年度の夏季休暇などを利用して調査する予定だ。
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今後の研究の推進方策 |
パンデミックの影響を受けた在外資料の調査やまとめの作業を行うために、研究期間を一年延長した。次年度は、滞在中に公開されなかったアメリカのホロコースト博物館の資料のほか、この2年間渡航できなかったポーランドやドイツに渡航し、資料調査を行う。さらに、まとめの研究とその成果発表を行う。イェール大学図書館フォーチュンオフ・アーカイヴ資料を閲覧するための日本拠点を作る提案もあり、その準備も進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度以降のパンデミックにより、海外渡航調査に影響が出たため、1年研究期間を延長した。次年度、ヨーロッパおよびアメリカへの資料調査渡航、研究者の招聘やオンライン会議における謝金、外国語論文の校閲のために使うことを想定している。
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