• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2018 年度 実施状況報告書

テクスト分析を用いた戦後ドイツ歴史論争の再検討

研究課題

研究課題/領域番号 18K00468
研究機関山形大学

研究代表者

渡辺 将尚  山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (90332056)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード戦後ドイツ / ナチズム / 戦争責任論 / 東西分裂 / 修正主義 / 新保守主義
研究実績の概要

本研究の目的は,戦後のドイツにおいて活発な論戦が繰り広げられた3つの歴史論争について,各論者の言説を新たな方法論に基づいて丹念に読み直すことにより,既存の研究では見えてこなかった新たな論争の姿を提示することにあるが,本年度はまず,本補助金交付前からすでに着手していた1986年の「歴史家論争」についてある一定の成果を上げ,次年度以降の研究への足がかりを作ることを目標に各種作業を進めた。
公表することのできた成果は,学会誌へ投稿した学術論文1件,シンポジウムの企画・コーディネーター担当1件である。まず学術論文においては,「歴史家論争」中の重要な論客である歴史学者エルンスト・ノルテの著作・論文・エッセイ・講演録を詳細に読み込み,歴史修正主義的立場(ドイツの罪,つまりナチ政権下で行われた戦争および犯罪を,これまで言われているよりも害のないもの,あるいは数字的に少なく見積もる立場)が即,同様の方法によってドイツの権益拡大をねらう当時のコール政権を支持していることにはならないことを指摘した。既存の研究においてノルテは,その修正主義的立場ゆえに,レーガン=コール路線を支持する新保守主義者と見なされてきた。本研究によって,修正主義者であっても反米的立場を取りうることが示されたことには非常に大きな意義がある。
シンポジウムの趣旨は,18世紀末から19世紀初頭のドイツに端を発するロマン主義がいかに他国・他文化・他時代に影響を与えたかを考察するものであったが,報告者はノルテらの歴史修正主義をロマン主義的傾向の1つと位置付け,上に記した成果の一端を用いつつ,現代にも存在するロマン主義について自らの立場を明らかにした。さらに3人のパネリストおよびフロアーの参加者らが提示する事例と比較しつつ活発な議論を行い,自身の次年度以降の研究に多大なる示唆を得た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度の目標は,できるだけ早期に「歴史家論争」の研究を終え,2年目の主眼である「フィッシャー論争」の研究に移行することであった。本年度は,10月に「歴史家論争」に関する学術論文を学会誌に発表し,12月と3月に実施したドイツでの資料収集は,「フィッシャー論争」の文献収集に専念することができた。特に3月の資料収集では,論争当事者の1人が頒布した,日本国内では存在すら周知されていない小冊子を発見し,複写物を日本に持ち帰ることができた。以上のような理由から,研究は概ね計画通り順調に進行していると評価する。

今後の研究の推進方策

「フィッシャー論争」の研究では,第2次世界大戦の萌芽はすでに第1次大戦期にあるとするフリッツ・フィッシャーの著作に対して,もっとも激しい批判を浴びせた歴史学者ゲルハルト・リッターの言説に着目する。これまでの2回のドイツにおける調査で収集できたリッターの一次文献に関しては,すでにかなり詳細なテクスト分析ができており,リッターの思考の枠組みあるいは背景・前提等が明らかになりつつある。2019年度は夏期休業中等,できる限り早い段階で再度ドイツでの資料収集に赴き,研究者たちの論文等,二次文献の収集を行いたい。また,2018年度同様,秋頃には何らかの成果を発表し,年度内に次の「ゴールドハーゲン論争」の分析に入りたい。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 「アジア的」,「好戦的」,「男性的」なナチズム-「歴史家論争」の再検討-2018

    • 著者名/発表者名
      渡辺将尚
    • 雑誌名

      ドイツ文学論集

      巻: 51 ページ: 39-53

    • 査読あり
  • [学会発表] シンポジウム「ロマン主義の伝染力(ヴァイラリティ)」2018

    • 著者名/発表者名
      渡辺将尚・金津和美・佐藤伸宏・加藤健司
    • 学会等名
      比較文学会東北支部大会

URL: 

公開日: 2019-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi