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2021 年度 実施状況報告書

テクスト分析を用いた戦後ドイツ歴史論争の再検討

研究課題

研究課題/領域番号 18K00468
研究機関山形大学

研究代表者

渡辺 将尚  山形大学, 人文社会科学部, 教授 (90332056)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2023-03-31
キーワードナチズム / ホロコースト / 戦後ドイツ / 戦争責任論
研究実績の概要

本研究は,戦後の西ドイツおよび再統一ドイツにおいて闘われた3つの大きな歴史論争を取り上げ,それぞれの論者の思想的背景を分析するものである。3つの論争のうち,これまで,60年代の「フィッシャー論争」および80年代の「歴史家論争」については分析を終え,すでに成果を論文として発表しているため,再統一後の1996年に起こった「ゴールドハーゲン論争」の分析のみ残された状態となっていた。
ただし,令和3年度に入ってもなお,ドイツでの資料収集の目処が立たなかったことから,当該年度は,すでにドイツで収集済みの資料に,日本国内で収集可能な「ゴールドハーゲン論争」関連の文献を加え,「歴史家論争」から「ゴールドハーゲン論争」に至る経過に着目した研究を進めることとした。
具体的に注目したのは,歴史学者ハンス・モムゼンである。彼は,「歴史家論争」において,ナチズムをスターリンの粛清の単なる二番煎じであると主張したエルンスト・ノルテに対して,「ナチズムの罪の過小評価」であると痛烈な批判を浴びせた人物であるが,その同じモムゼンが,「ゴールドハーゲン論争」では,まるでノルテの言かと思わせるような発言をしている(例えば,「第2次大戦の厳しい戦況が,ユダヤ人の大量虐殺を引き起こした」など)。その理由について,当該年度の研究では,ドイツの歴史論争に関する多数の著作があるヴォルフガング・ヴィッパーマンの議論を参考に,(1)「仮想敵国」であった東欧ブロックの存在こそが,まさに西ドイツの知識人たちが「自らが正義の側にいる」ことの証であったこと,(2)それが失われた再統一後,彼らは新たな拠り所を求め始め,その結果たどり着いたアイデンティティが「古き良きドイツ」の再確認であったこと,以上のような点を論じた。
なお,本成果は,4月15日締め切りの「ドイツ文学論集」に投稿し,現在査読中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

令和3年度は,認めていただいた延長期間の最初の年であり,可能であれば「ゴールドハーゲン論争」のみに特化した詳細な分析を行う予定であった。前項目の内容とも重複するが,当該年度もドイツでの資料収集ができず,「ゴールドハーゲン論争」に特化した研究をするには文献が不足すると判断し,日本国内で収集する文献だけでも可能となりそうであった「歴史家論争」との比較を行うこととした。
まだまだ「ゴールドハーゲン論争」について調査すべきことは残っているが,着手し,一定の成果を上げることはできたため,「おおむね順調」の判断を下した。

今後の研究の推進方策

前項目に記したように,やはり「ゴールドハーゲン論争」のみに特化した研究を行いたい。具体的には,モムゼン以外のドイツの論客(例えば,エーバーハルト・イェッケル,フォルカー・ウルリヒ,ハンス・ウルリヒ・ヴェーラーなど)をも取り上げ,1人の人間の思想的変遷ではなく(もちろん上述のように,この視点も重要であり,ここからも新たな知見を得ることは可能である),同時代の人間たちの相違を浮き彫りにしたい。
そのような研究が可能となるためには,ドイツでの資料収集が欠かせない。

次年度使用額が生じた理由

新型ウィルスの影響によりドイツ出張ができなかったため残額が生じた。すでに延長期間の2年目に入っており,新たな配分はなく,ドイツ出張が可能となり次第当該予算は全額執行可能であり,その後速やかに成果をまとめることができる準備を整えている。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] 右傾する「メカニズム」――再統一後における歴史学者ハンス・モムゼンの思想的転向をめぐって2022

    • 著者名/発表者名
      渡辺将尚
    • 雑誌名

      ドイツ文学論集

      巻: 55 ページ: 未定(査読中)

    • 査読あり / オープンアクセス

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公開日: 2022-12-28  

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