研究課題/領域番号 |
18K00469
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
鴻野 わか菜 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 准教授 (50359593)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ロシア美術 / ロシア文学 / ロシア文化 / 現代美術 / 現代文学 |
研究実績の概要 |
(1)ロシア、日本、中国、ドイツ、ブラジルなど13か国のアーティスト、文学者、研究者、ジャーナリストらがロシアの研究船に同乗し、12日間の南極航海を共にし、アーティストの作品を通じて人類共通の問題について討議し、対話の場を形成する試みである「南極ビエンナーレ」(第1回南極ビエンナーレは2017年に実施。鴻野も参加)についての研究、分析を継続して行った。その成果として、「南極ビエンナーレの旅」(『ゲンロンβ』31)、「白い旅――南極ビエンナーレと越後妻有」(『すばる』2018年12月号)等の論考を発表した他、シンポジウム「南極の人文学的諸問題」(2018年7月30日)の企画に関わり、司会を務めた。 (2)ソ連のアンダーグラウンド芸術と文学についての研究を行い、イリヤ・カバコフの回顧展を調査し、その成果の一部を「知られざるイリヤ&エミリア・カバコフの過去を紐解く。大回顧展<誰もが未来に連れていってもらえるわけではない>がトレチャコフ美術館で開幕」(『ウェブ版美術手帖』)、「マーシャ・イヴァンシンツォヴァを追って」(ROADSIDERS' weekly 2018/06/13号 Vol.311)で発表した。 (3) 現代ロシア文学(散文・詩)とロシア現代美術の研究を、個別的に、また、両ジャンルに共通する主題や背景に注目することで横断的にも実施した。その成果の一部を「Art Scene エカテリンブルク 革新と団結を求める自由な都市が生み出すアート」(『美術手帖』vol.70 No.1071)等で発表した。カルーガ州の芸術公園ニコラ・レニヴェツ等で現地調査を行った。 (4) ロシア現代文学・現代美術の研究成果を、NHKラジオ「まいにちロシア語」講座の番組(全72回)とテクストで紹介し、研究成果の社会的還元に務めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1) ロシアでのフィールドワークでも多くの作家、詩人、研究者、学芸員(東洋美術館、ガレージ現代美術館、トレチャコフ美術館等)の協力を得て、資料の収集、取材が順調に進んだ。 (2) 研究対象である複数の現代アーティストが来日し、現代美術・南極ビエンナーレの諸問題等について時間をかけて議論を深めることができた。 (3) ペテルブルク大学の哲学研究者アレクサンドル・セカツキー氏らと共同研究を展開し、現代美術と現代文学について、哲学・思想的な観点から検討する機会を得た。
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今後の研究の推進方策 |
(1) ロシア現代文学と視覚芸術の相関性について、2019年4月から5月にかけて執筆した『文藝年鑑2018』「ロシア文学」でも言及したが、今後は、現代美術と文学に共通する主題、特徴、展開についての比較的な研究に取り組みたい。 (2) 20世紀初頭から現在にかけてのロシア文学・美術・映画・音楽における宇宙の主題(宇宙、空、天、飛翔)について、ロシアの宇宙思想や19世紀文学の影響も考察しながら、ジャンル横断的に研究を進める。ロシア人研究者、作家(アレクサンドル・ポノマリョフ、レオニート・チシコフ、ターニャ・バダニナ、ウラジーミル・ナセトキンら)とも討議、対話を行い、研究成果を、論考、シンポジウム、レクチャー、展示等で発表する。 (3) 旧ソ連圏の美術・文学研究、及び、日本とロシア以外の諸外国におけるロシア現代美術と現代文学の展開についての研究が不足している現状に鑑みて、アゼルバイジャン、中国等における現代ロシア美術と文学の受容について、現地調査を行い(バクー・ビエンナーレ等)、現地の研究者と意見交換し、資料を収集し、研究を開始し、新しい研究テーマの基盤を確立する。 (4) ロシア現代美術・文学・映画等の紹介に関心のある地方自治体、団体等と協力し、ロシア・東欧現代美術・文学の日本での紹介(翻訳、講義、展示等)に務め、研究成果の社会的還元を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度に購入するはずだった現代美術の研究書、画集等の刊行が2019年度に延期されたため。
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