2022年度の主なテーマは、現代ロシア美術、現代ウクライナ美術を、文学・文化との関わりから研究することだった。とりわけ、現代ロシア美術に関しては、レオニート・チシコフ 、アレクサンドル・ポノマリョフ、ターニャ・バダニナ 、エカテリーナ・ムロムツェワ、アンドレイ・クスキン等の作品を中心に研究し、ムロムツェワとクスキンに関してはこれまでの作品全体を振り返りつつ、現在の創作について論じる論考を発表した。ポノマリョフとは、日本学術会議シンポジウムに共に参加し、鴻野は南極、日本、ロシア、東欧におけるアートプロジェクトについて発表し、共同討議を行なった。また、イリヤ&エミリア・カバコフのプロジェクトについても論考を発表した。 ロシア東欧の現代美術について討議するため、ロシアのウラル連邦大学、ベラルーシの美術アカデミーから現代美術研究者を招聘し、共同討議を行い、早稲田大学主催国際シンポジウム「ロシア東欧現代アートの現在」を企画開催した。 ロシア音楽については、ロシア歌曲の詩(20世紀初頭文学)についての論考を2本発表し、また、アレンスキー協会で歌曲と詩、美術について講演「ロシア・モダニズムの音楽・美術・文学――夢と現実のはざまで」(札幌)を行なった。また、研究の還元として、2022年「大地の芸術祭」および東京のギャラリーで、ムロムツェワの反戦的な作品の展示などを担当した。研究成果の一部を、NHK「日曜美術館」「視点論点」や各地の講演会などを通じて紹介した。
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