研究課題
基盤研究(C)
本研究では、18世紀後半のエカテリーナ二世の時代から対ナポレオン戦争の時代、さらに1830年代に至るまでのロシアの文芸における「ロシア」の形象を考察対象とし、18世紀にはヨーロッパ化の枠内で生み出されたロシア像が次第にヨーロッパとの差異を強調するようになるプロセスをある程度明らかにした。成果の一部は学会で報告されたが、コロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻が影響して研究計画に変更を余儀なくされたため、その進行はやや遅れた。
人文学
ロシア文化の研究が大きく19世紀以降に集中している中、近代ロシア文化の基礎が築かれた18世紀のロシア文化の研究はその空隙を埋める大きな意義を持つ。またロシア文芸の中の「ロシア」表象を主題とする本研究の成果は、現在にまで引き継がれるロシアの自己認識、ナショナル・アイデンティティの問題を考える上で踏まえておくべき重要な文脈についての知を提供するものとなる。ロシアをめぐる問題が世界的な重要課題となる中、その社会的意義は大きいと考えられる。