研究課題/領域番号 |
18K00471
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石原 あえか 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (80317289)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 近代測地学 / 近代林業 / 大彗星(1811年) / 隕石 / ゲーテ / クラドニ / 近代天文学 / 日独学術交流史 |
研究実績の概要 |
海外出張が困難だったため、国内の課題関連施設をピックアップし、計画的に訪問・調査を行った。特に神戸の伊能忠敬展および新湊博物館での資料収集は、ゲーテと同時代の日本における測地学・天文学の問題を比較検討する上で非常に役立った。この延長上で2021年12月には伊能忠敬研究会の主要メンバーと本郷・総合図書館で貴重資料閲覧・検討会も開催した。糸魚川フォッサマグナミュージアムでの調査については、2022年度の研究に反映させ、公表したい。 琵琶湖周辺調査を一部反映した日本におけるドイツからの近代林業受容に関する発表(京都・日文研にて)と論文「極東への林学ルート 近代日本における独墺林学受容史」は、ゲーテと地学・気象学に隣接する〈林業〉について言及したものだが、先行研究が少なく、オーストリアでの調査が望ましく、さらに踏み込みたい領域である。またゲーテを起点とした近代測地学・地理学については、測量の専門家を前に講演する機会に恵まれ、多くの示唆を得た。2022年3月には、ドイツ・ヴァイマルで2年延期していたDFGとJSPSの日独共同セミナーWorkshop zu Goethes Studien zur Naturwissenschaftをドイツの同僚(Dr. Eckle)と企画・実行、ドイツ語圏の専門研究者集団と綿密かつ高水準の議論が展開できた。討論等はすべてドイツ語で行い、司会だけでなく、ゲーテと天文学、特に1811年に欧州で観測された大彗星およびゲーテ時代の隕石研究についても発表した。このセミナーについては推敲のうえ、Eckleと共同編集作業を経て、来年度中に小論文集としてドイツで刊行の予定である。 なお、2020年度の成果として刊行した拙著『教養の近代測地学』が、国土地理院から令和3年度「測量の日」における功労者感謝状贈呈の理由のひとつになったことを付記しておく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度に続き、COVID-19による渡航規制が厳しく、2021年度も本来の課題のメイン研究対象であるドイツ・ヴァイマルにある一次資料に手が届かず、ドイツ側の協力を得ても実際に現物が見られないのでは限界があり、理想とする計画通りに進まなかった。他方で入手済み資料等の整理・分析等も行ってきたが、論文・書籍等の形にして公表するにはまだ時間が不足していた。加えて終了した旧科研課題と関わるゲーテと医学関連の研究成果が追加で公開可能な段階になったこともあり、そちらに思いのほか時間をとられたという事情もあった(別途、医学史系の論文2点公開済、もう1点は2022年夏刊行決定・印刷準備中)。しかし本研究課題についても2022年3月に短いながら渡独が叶い、必要最小限の資料も整ったので、2022年度に巻き返し、遅ればせながら目標に到達したいと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年3月に2年半ぶりに渡独でき、ドイツ・ヴァイマルの文書館・図書館での貴重資料閲覧やゲーテ博物館バックヤードでの標本調査等を敢行、必要最小限の資料等を入手した。この3月の出張後半は、2020年採択の二国間交流事業セミナー「ゲーテと自然科学」の実施も兼ねており、スイスを含むドイツ語圏のゲーテと自然科学に特化した専門集団の中で数日にわたって濃密かつ高水準の情報交換ができたことは大きな収穫だった。本課題と密接に関わるセミナー成果については、これから発表原稿を中心に大幅な推敲を行い、ドイツ側研究代表者と一緒に編纂し、2022年度中に小論文集としてドイツで刊行の予定である。さらに最終年度には、口頭発表や論文だけでなく、2020年11月に中間報告として上梓した『教養の近代測地学』の続編かつ本課題の総括となる日本語単著の完成稿を2022年度中に仕上げることを目標とする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたのは、COVID-19感染拡大が依然続き、海外出張だけでなく、国内での移動にもかなり制限があり、計画通りに資料調査が行えなかったのが最大の理由である。 2022年度は2021年度までに収集した資料の整理・分析・まとめに入るので、たとえ引き続き海外出張が難しくても、国内出張およびPCによる研究作業および執筆に必要な周辺機器や校閲などで計画的に使える見込みである。
|
備考 |
2020年度成果としての拙著を著者自らが紹介するページ。英語版あり:https://www.u-tokyo.ac.jp/biblioplaza/en/G_00104.html
|