研究課題/領域番号 |
18K00472
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
彦江 智弘 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 教授 (80401686)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 都市計画 / 文学 / 計画 / フランス第3共和政 |
研究実績の概要 |
当該年度も新型コロナウィルス感染症に対する種々の対応を迫られたため、当初の計画からの変更を余儀なくされた。とりわけフランスでの調査を行うことができなかったため、すでに収集済みの文献資料、あるいは国内で参照可能な文献資料を活用し研究を進める運びとなった。 このような制約があるなか、今年度は19世紀フランスにおける都市の発展と都市計画の成立過程の再整理に取り組んだ。その際にとりわけ注目したことのひとつが、都市計画(urbanisme)における「計画」概念の重要性である。「計画plan」という語は「都市計画」という日本語の用語や「urban planning」という英語表現には当たり前のように含まれているが、フランス語の「都市計画urbanisme」においては必ずしも自明ではない。これに対して先行研究の検討から浮かびあがってくるのは、この「plan」概念にはたんなる都市への工学的介入の具体的な手筈の策定という以上のニュアンスが与えられていた点である。実際、都市計画家たちは様々な社会問題によって疲弊した都市共同体の再建という目論見を黎明期から抱いていた。 このような観点からの研究成果は以下の研究論文に取り入れた。「ランボーによる「都市の設計」──散文詩「都市」からル・コルビュジエへ」(『常盤台人間文化論叢』第9号、2023年3月、p. 33-52)。なお本研究論文は、当該研究課題とその発展的研究課題である「都市計画の時代としてのフランス第三共和政とその文学:ル・コルビュジエと作家たち」を架橋するものでもある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究課題申請時には主にフランスにおける調査を研究推進上のひとつの軸に据え研究計画を策定していたが、本年度も昨年度に引き続きコロナ禍のためこれを実施できなかった。そのため進捗状況としては「やや遅れている」とせざるを得ないと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
状況は漸進的に改善しつつあるとはいえ、新型コロナウイルス感染拡大のあおりをうけ、研究・教育の両面において日々様々な対応を強いられたため、本研究課題への取組も度々変更を余儀なくされた。そのため進捗状況としては上述のとおり「やや遅れている」とせざるを得ないが、研究期間を延長するなかで当初の研究計画にはなかったゾラの作品(『制作』)の重要性への気づきや「労働」というテーマの導入、あるいは印象主義ではなく新印象主義との関連性など都市という観点からゾラのテクストに新たな光を当てる上での思いがけない成果もあった。 研究課題の最終年度にあたる2023年度においては、このような紆余曲折を経た本研究を総合することをめざす。また2023年度は海外渡航制限がさらに緩和・撤廃される見通しなため、フランスでの調査を実施し研究の総合を補完したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大によりフランスでの調査を行うことができなかったため、すでに収集した、あるいは国内で入手可能な文献資料を活用し研究を進めた。予算の残額については、主に2023年度におけるフランスでの調査のための海外渡航費に充てる予定。
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