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2020 年度 実施状況報告書

再統一後のベルリンにおけるナチズムとホロコーストの記憶の空間表象

研究課題

研究課題/領域番号 18K00475
研究機関名古屋大学

研究代表者

安川 晴基  名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (60581139)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード記憶 / ドイツ / ベルリン / ホロコースt / モニュメント / ミュージアム / パブリックアート / 都市
研究実績の概要

本研究は、ポスト冷戦時代のドイツにおける「想起の文化」を対象にしている。「想起の文化」とは、ナチズムとホロコーストの負の過去をめぐる、今日のドイツの集合的想起の営みを指している。この「想起の文化」は、1980年代に輪郭を現し始め、90年の再統一後は政治・社会・文化のさまざまな次元で展開されている。通常の共同想起の営みが、肯定的な自己像を媒介し、それにそぐわない要素は排除するのに対して、ドイツの「想起の文化」の新しさは、自国の犯罪的過去とその被害者を積極的に共同想起のレパートリーに編入していることにある。この共同想起の実践は、東ドイツを吸収合併した連邦共和国の新たなナショナル・アイデンティティを基礎づけるためのものである。
本研究は、今日のドイツの「想起の文化」の諸相の中でも、とりわけ、90年代以降にベルリンに設置された新たな「想起の空間」(ミュージアム、モニュメント、パブリック・アートなど)に着目し、ナチズムやホロコーストの負の記憶にいかなる形が与えられ、社会的共有と次世代への継承がはかられているかを詳らかにするものである。
2020年度は、新型コロナウイルス感染拡大による渡航制限のため、当初予定していたドイツでのフィールドワークを実施することができなかった。その代わりに、本研究の成果を公表するために準備している単行本『想起のトポグラフィー(仮題)』(岩波書店刊行予定)の執筆に集中的に取り組んだ。その中でも、ドイツ歴史博物館、ベルリン・ユダヤ博物館、記録センター「テロルのトポグラフィー」、および、カウンターモニュメントを扱った諸章の執筆を進めた。また、再統一後のドイツの「想起の文化」の研究と並行して、集合的記憶についての理論的研究も行なっている。その一環として、ヤン・アスマン著『文化的記憶』(福村出版刊行予定)の翻訳作業を進めた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

「研究実績の概要」に述べたとおり、2020年度は、新型コロナウィルス感染拡大のため、予定していたドイツでのフィールドワークができなかった。そのため、必要な資料の収集にやや遅れが生じている。その一方で、執筆中の単行本『想起のトポグラフィー(仮題)』に関しては、ドイツ歴史博物館(第1章)、ベルリン・ユダヤ博物館(第2章)、記録センター「テロルのトポグラフィー」(第3章)、「カウンターモニュメント」(第4章」についての執筆を進めた。

今後の研究の推進方策

2021年度は、2020年度に予定していたものの、新型コロナウィルス感染拡大のため断念せざるをえなかった、ドイツでのフィールドワークを行ないたい。ハンブルク、ザールブリュッケン、ベルリンでの資料収集を予定しているが、感染拡大の状況を見極めたうえで、渡航不可の場合には、本研究課題を再延長する可能性も視野に収めている。
フィールドワークと並行して、これまでの調査結果を単行本の形にまとめていく。 さらに、「文化的記憶」に関する理論的研究の一環として、目下翻訳中のヤン・アスマン著『文化的記憶』を、2021年度内に刊行したい。

次年度使用額が生じた理由

2020年度にドイツでのフィールドワークを予定していたが、新型コロナウィルス感染拡大により、海外渡航を延期せざるを得なかった。
(使用計画) 2021年度は、ドイツでのフィールドワークを再開し、ハンブルク、ザールブリュッケン、ベルリンで資料収集を行いたい。その 旅費に前年度の残余分を充当する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] 自国の負の過去にどう向き合うか:ドイツの「想起の文化」と空間実践2020

    • 著者名/発表者名
      安川 晴基
    • 雑誌名

      臨床心理学

      巻: 増刊12 ページ: 158-164

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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