本研究課題においては La Covid-19 の影響で海外に渡航できない期間が長く、また最終年度は研究代表者の入院とリハビリもあり、実施計画どおりにはまったく進まなかったのはなんとも残念であった。ようやく2023年3月初めに渡仏する機会を得たが、前期・後期入試の合間を縫っての現地入りとなり、十分な調査ができたとは言えない。 「象徴主義」研究会で、マラルメの/と経済に関する発表を行った。 少なくとも研究サイト Mall'archives を現時点で可能な限り充実させたかったが、まだまだ不十分のままである。 本研究課題はここでいったん終了することになるが、今後数年をかけてゆっくり研究成果を公にしていきたいと考えている。具体的にはマラルメがオックスフォードとケンブリッジで行った講演を収めた『音楽と文芸』の翻訳出版だが、併録された「有益な遠出」に関するものも含め、詳細な解説を附す予定である。とりわけ、「文学基金」に対する当時のさまざまな反応、およびそれに対するマラルメの応答となったはずの未発表草稿61葉を併せて論じることで、詩人の見定めた「文芸共同体」の理念を明らかにすることができると思われる。また同時に、火曜会だけでなく、『ボードレールの墓』刊行、『エコー・ド・パリ』紙での詩と散文の投稿者に賞を授け、出版を後押しするなどの実践とも付き合わせながら、詩人の思考を重層的に解き明かすことを目指したい。 海外での資料調査は進まなかったが、資料収集の方では思いがけない行幸にも恵まれた。手紙や自筆原稿をコンピューターで読解するために必要な資料を増やすことができた。必要に応じて、研究サイト Mall'archives でも公開し、研究者や愛好家に資するようにしたい。
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