研究課題/領域番号 |
18K00483
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
海老根 剛 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (00419673)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 群集 / 群れ / ヴァイマル共和国 / 都市文学 |
研究実績の概要 |
本研究の主題は、20世紀末から21世紀初頭にかけて政治哲学および自然科学の分野で急速な発展を遂げた集団や群れの行動に関する理論的知見にもとづいて、ドイツ・ヴァイマル共和 国時代の文学作品の群集表象を新たな角度から分析することである。2020年度には、新型コロナウィルスの蔓延に伴うドイツへの渡航が実施できなかったため、1カ年の計画の延長を申請した。今年度は主に以下の作業を行った。 年度を通して、1920年代中葉の新即物主義的な都市文学における大都市ベルリンと群集および女性の表象の結びつきについて考察を進めた。Rudolf Braun や Martin Kessel の都市小説において、サラリーマンないしはオフィスレディとして設定された主人公は、大都市ベルリンの街を行き交う無名の群集を構成する匿名的な存在の一人として提示される。このことはこの時代の小説に特徴的な語りの手法を要請する。またとりわけ Martin Kessel の小説では、女性の登場人物が都市環境において男性の眼差しによって対象化する事態が主題化されている。本年度はこれらの点を重点的に検討した。また年度後半には、批判版全集の草稿資料をも利用してヴァルター・ベンヤミンの晩年の思考(とりわけ「歴史の概念について」およびボードレール論におけるそれ)を再検討し、その成果に基づいて、ベンヤミンのボードレール論における群集をめぐる議論に関する研究発表を日本フランス語フランス文学会(東北支部)で行った。 しかしながら、2021年度も当初予定していたドイツでの資料調査を実施することはできなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究面には着実に進展が見られるものの、昨年度末における研究期間延長申請の理由であったドイツへの海外渡航と資料調査は、本年度も実施することができなかった。その影響で、一部の資料の収集に支障が生じた。そのため研究期間を再延長し、2022年度中にはドイツでの資料調査を必ず実施したいと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方針については、以下のように考えている。 最大の懸案はドイツでの資料調査の実施であるが、新型コロナウィルスの蔓延状況の変化は予測が難しいため、余裕を持って準備を進め、状況悪化による渡航困難が生じないようにタイミングを判断して渡航を実現させたいと考えている。 加えて2022年度はヴァイマル共和国中期の都市小説、とりわけ女性作家によって書かれた作品における群集表象とそれに関わる主題の検討を進める。また当時のルポルタージュ文学における群集の主題の現れについての調査を行う予定である。年度末にむけて、当該の主題について論文を執筆することを計画している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度に予定していたドイツでの資料調査が実施できなかったため、海外渡航旅費として支出を予定していた金額が未使用になってしまった。2022年度には必ず渡航を実現し、残額をすべて執行する予定である。
|