我々は以前、20世紀初頭のロシアの宗教思想の諸問題を当時の帝国主義的な世界状況との関連で検討したが、同じ時代状況はロシア以外の文化圏の哲学や文学や芸術にも反映しているはずだという予測を立てていた。今回の研究はそうした予測に基づき、ドイツやフランスに亡命したロシア人哲学者の思想と西欧の同時代の思想の関係を手掛かりに、哲学思想の同時代性を明らかにしようとする試みであった。その結果、我々はシェストフのキルケゴール論を手掛かりにして第一次世界大戦期のロシア思想とワイマール期のドイツ思想を一つのパースペクティヴにおいて見る可能性に気が付いた。このことは我々の比較思想的な研究にとってきわめて重要である。
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