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2018 年度 実施状況報告書

トランスカルチャー的舞台としての東アジア研究―自己像と亡命者のアジア像を通して

研究課題

研究課題/領域番号 18K00485
研究機関学習院大学

研究代表者

Pekar Thomas  学習院大学, 文学部, 教授 (70337905)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードアジア・ドイツ研究 / トランスカルチャー / 越境文化 / 亡命文学 / 日本受容 / 東アジア受容 / 文化接触 / 空間研究
研究実績の概要

1) 本研究で明らかにする「トランスカルチャー(越境文化)的舞台」の例については、欧州における日本の戦争観に関する言説(新渡戸稲造の『武士道』に体現されている)と、1918~1939年のドイツにおけるイデオロギー的全体主義化の関連からトランスカルチャーについて考察し、その成果を2018年12月にベルリンの森鴎外記念館にて報告した。なお、トランスカルチャーについては、前科研プロジェクトの成果として複数の文化の混合が特徴的である中間的空間に関する諸研究を論集Wohnen und Unterwegsseinとして2019年1月に出版した。
2) 独語圏から東アジアへの亡命者が自身の経験などを記したテキストの分析に関しては、ナチス支配下のドイツから上海に亡命した重要人物A.J.Storferと彼が発行した雑誌について論文を執筆し刊行した。日本ならびに上海における亡命については、研究者が2020年に東京にて国際シンポジウムを開催する予定であり、同テーマで研究している管野賢治教授(東京理科大学)らと共に準備を始めた。また、Marbach文書館にて、ドイツから日本へ亡命したKarl LoewithならびにKurt Singerの未だ出版されていない手書きの手紙を調査し、これらの出版に向けて館長と意見交換を行った。
3)もう一つの目的である、米国における類似研究の課題点を指摘したうえで、日本・欧州と米国相互の研究成果を共有し、新しい学問分野AGS(アジア・ドイツ研究)を確立することに関しては、米国のアジア・ドイツ研究者J.M.Cho教授(William Paterson University, NJ)、C.Zhang教授(Univ. of California)らと意見交換を行った。その成果は2020年に学会誌German Quarterlyに掲載される予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

これまでの東アジア研究とAGSとの関連、またAGSとトランスカルチャーの結びつきについては、様々な学会の口頭発表ならびに論文において中心的に取り扱うことができた一方で、亡命・移住との関連に関する分析はやや遅れている。AGS、トランスカルチャー研究、亡命研究という3つの重点を結びつけて研究を進めていく必要がある。
日本ならびに上海への亡命をテーマとし、2020年に開催する国際シンポジウムのため、引き続き、国内外の研究者と意見交換を行い、準備を進めていく必要がある。今後、シンポジウムの具体的なコンセプトを完成させ、参加者リストを作成していく。また、過去の科研プロジェクト同様、ゲーテ・インスティトゥートと連携して開催できるよう、館長Peter Andersと計画を進める。

今後の研究の推進方策

a) AGSに関しては、2019年10月に米国ポートランドで開催される学会German Studies Associationに参加し、Joanne Miyang Cho教授らの分科会でAGSの前史について口頭発表を行う。さらに、共同討議 ”Scholarly Trends in Asian German Studies”に参加し、”Exile Studies on East Asia and AGS”というテーマで発題する。Cho教授とはアジアへの亡命に関し、2020年に共同で論集を出版することを計画しており、報告者の論文も収録される予定である。
b) 2019年8月に札幌で開催されるアジアゲルマニスト学会に参加し、東アジアの自己像と、それに共感した西欧のテキストについて口頭発表を行う。本発表にて東西の言説形式が多層的に相互に依存し合っていることを指摘する。最終的には、両言説が二分されるのではなく、共通のトランスカルチャー的言説形式として考察できると考えている。

次年度使用額が生じた理由

理由:(1)予定した研究旅費は科研をしようせず、自費で対応したため。科研研究目的と他の目的を行う一つの出張への使用がルール上できないため。(2)希望していた条件にあう研究助手が見つからずその分の使用がなかったため。
使用計画:今年度複数回の海外における学会発表を予定しており、それに使用する。また、次年度に開催するシンポジウムへ海外から招聘する予算として残しておく。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 4件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Zum Innenraumdiskurs in Robert Musils Roman "Der Mann ohne Eigenschaften". Transkulturelle Perspektiven im Blick auf Japan2019

    • 著者名/発表者名
      Thomas Pekar
    • 雑誌名

      Wohnen und Unterwegssein. Interdisziplinaere Perspektiven auf west-oestliche Raumfigurationen

      巻: - ページ: 293-313

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] 序文2019

    • 著者名/発表者名
      Thomas Pekar
    • 雑誌名

      Wohnen und Unterwegssein. Interdisziplinaere Perspektiven auf west-oestliche Raumfigurationen

      巻: - ページ: 11-35

    • 国際共著
  • [雑誌論文] Innenraeume in Robert Musils "Der Mann ohne Eigenschaften"2018

    • 著者名/発表者名
      Thomas Pekar
    • 雑誌名

      Das Abenteuer des Gewoehnlichen: Alltag in der deutschsprachigen Literatur der Moderne

      巻: 267 ページ: 75-94

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Die Psychoanalyse im ostasiatischen Exil. A. J. Storfer und sein Zeitschriftenprojekt "Gelbe Post"2018

    • 著者名/発表者名
      Thomas Pekar
    • 雑誌名

      Exilforschung: Österreich. Leistungen, Defizite und Perspektiven

      巻: - ページ: 199-213

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] 書評Meron Medzini "Under the Shadow of the Rising Sun: Japan and the Jews during the Holocaust Era"2018

    • 著者名/発表者名
      Thomas Pekar
    • 雑誌名

      Holocaust and Genocide Studies

      巻: 32 ページ: 312-313

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Thomas Manns Essay "Pariser Rechenschaft" (1926) als Vorstufe seines Exils2018

    • 著者名/発表者名
      Thomas Pekar
    • 学会等名
      Vortrag bei der Konferenz der North American Society for Exile Studies (NASES) "Vorstufen des Exils: irgendwo zwischen Heimat und Ankunft", Loyola University Chicago
    • 国際学会
  • [学会発表] Japanische Kriegsdiskurse und die ideologische Totalisierung des Kriegs in Deutschland in der Zwischenkriegszeit (Nitobe, Haushofer, Ludendorff, Ernst Juenger)2018

    • 著者名/発表者名
      Thomas Pekar
    • 学会等名
      Deutsch-Asiatischen Studientag Literaturwissenschaft, Frei Universitaet Berlin, Humboldt Universitaet, Mori-Ogai-Gedenkstaette
    • 国際学会 / 招待講演
  • [図書] Wohnen und Unterwegssein. Interdisziplinaere Perspektiven auf west-oestliche Raumfigurationen2019

    • 著者名/発表者名
      Mechthild Duppel-Takayama, Wakiko Kobayashi, Thomas Pekar (Hg.)
    • 総ページ数
      434
    • 出版者
      transcript Verlag
    • ISBN
      978-3-8376-4327-5

URL: 

公開日: 2019-12-27  

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