研究課題/領域番号 |
18K00485
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
Pekar Thomas 学習院大学, 文学部, 教授 (70337905)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アジア・ドイツ研究 / トランスカルチャー / 亡命 / 亡命文学 / 日本受容 / 東アジア受容 / 文化接触 / 空間研究 |
研究実績の概要 |
1) 新しい学問分野AGS(アジア・ドイツ研究)の確立に関し、2本の英語による論文を完成させた。これらの論文は米国史研究者Joanne Miyang Choが発行しているPalgrave Series in Asian German Studiesに収録されることが決まっている。1本目の論文では第二次世界大戦中の上海へのユダヤ人亡命と、上海における現代中国の記憶政治を扱った。2本目の論文では、上海で雑誌を刊行した亡命者A. J. Storferについて論じた。Cho女史との意見交換により、限られた範囲ではあるが、英語圏のアジア・ドイツ研究に欠けていた視点を補うことができた。 2) トランスカルチャー的舞台の研究に関しては、昨年の報告書で言及した3本の論文(第一次世界大戦後から第二次世界大戦開戦までの時期、いかに日本の戦争に関する言説とドイツにおける戦争のイデオロギー的全体主義化が重なりあうものであったかの考察、東アジアの自己像とドイツ語圏におけるその受容について)が出版された。また新たに、1889年から1914年にかけて東京大学でドイツ文学およびドイツ語の教鞭を執ったドイツ人日本学者Karl Florenzに焦点を当て、日本におけるドイツ文学研究について分析を行い、ドイツの研究誌に発表した。2020年5月に学習院大学にて開催される予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期となった国際シンポジウムGoing into nowhere? Jewish Transit Migration and East Asia During World War IIについては、Webシンポジウムとして動画を視聴できるホームページを作成し、参加を予定していた研究者の講演を公開している。(https://www.goingintonowhere.com/speakervideos)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
AGS、トランスカルチャー研究、亡命研究という3つの重点を結びつけることの重要性を、2020年度の研究成果も証明することができた。本研究のトランスカルチャー的分析方法と米国のAGSの理論に本質的な違いはなく、両者は互いに補い合っていると言える。しかし、このトランスカルチャー的分析方法は理論的にさらに完成される必要がある。米国のAGSが英語ではない原典資料については、その英語訳からのみ引用し、英語外の原典資料に対して非常に表面的な分析に留まっていた点については、本研究を通して部分的に補うことができた。(一方で、新型コロナウイルスの影響により、参加予定であった多くの学会が開催されず、十分に口頭発表を行うことができなかった。また資料収集にも遅れが生じている。) またトランスカルチャー研究との関連で新たにRobert Musilの作品を「エキゾチシズム」という観点から分析し、口頭発表を行った。今後、Robert Musilの作品もトランスカルチャー的分析の対象としていく。
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今後の研究の推進方策 |
トランスカルチャー研究として、ソウル大学のJiyoung Shin 教授と共同で2021年10月にTranskulturalitaeaet in Literatur und Wissenschaft. Am Beispiel von Robert Musil. Internationales Kolloquium und Workshopsをソウル大学にて開催し、日本、韓国、中国、ドイツ、オーストリア、米国、オーストラリアなどからの研究者が口頭発表を行う予定である。本コロキウムはRobert Musilの作品を例にトランスカルチャーを論じるのみではなく、トランスカルチャー的分析方法の理論を確立することを目的とし、ワークショップを行う。 ドイツ語を母語とするアジアへの亡命者については、2021年9月にミュンヘンで行われる亡命研究会でZoomによる口頭発表Wandlungen des Exil- und Erinnerungsortes Shanghaiを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍において計画していた海外での資料収集、国内外の学会発表、招聘者を招いてのシンポジウム開催が軒並み中止となったため。計画変更・規模縮小等で今年度シンポジウム開催を計画してはいるが、ワクチン接種の遅れ等によりコロナのの終息が見通せないために、今年度の実効性は定かではない。
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