研究課題/領域番号 |
18K00487
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
山崎 明日香 日本大学, 商学部, 准教授 (10707350)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 演劇教育 / 君主教育 / バロック演劇 / ライプニッツ / コメニウス / ネストロイ |
研究実績の概要 |
2018年度は、演劇教育の導入を提言した思想家の言説を調査し、演技に普遍的な人格形成と諸国統治のための教育価値が付されていたことを検討した。そして、18世紀の啓蒙主義者のコスモポリタニズムの言説を対象に、そこで提唱された超国家的な商業平和主義と理想的な世界市民像を分析し、俳優の世界市民的で社会文化的な貢献についての認識を調査した。この課題に関して、まず19世紀ドイツ語圏で活躍した喜劇俳優ネストロイのレトリックと、その独創的で即興的な演技術を対象に、同時代の検閲という法領域を超越し、法的枠組みを毀損することになった、その法的また政治的な機能を分析した。さらにバロック時代のドイツ語圏の演劇文化である、エリート層の子弟の教養と道徳形成を担った学校演劇やイエズス会劇や、俳優に関する言説を調査した。その際に、ライプニッツの君主教育論『王子の教育についての書簡』に着目し、そこで提唱された王子に対する演劇教育の導入を検証した。ライプニッツの普遍主義における君主教育プログラムは、将来の為政者のための普遍的な教養修得と公共の利益への奉仕を構想するものであり、諸国治世に向けた演劇教育の導入は、演劇を組み込んだ国家建設的な政治化であることを分析した。さらに近世の直感教育教授法の先駆者であり、ヨーロッパの教育に後世まで多大な影響を及ぼした教育改革者コメニウスの遊戯学習や演劇構想に着目し、その演劇的また直感的な教育手法が、ライプニッツの教育思想に影響を与え、演劇的な教育手法による王子に対する演劇教育を推進していたことを明らかにした。研究成果は、「Actors and Their Cosmopolitan Existence」(『Cosmopolitan Imaginings/Kosmopolitische Gedankenwelten』所収)等がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は、18世紀の俳優像の集中的な分析にも従事する予定であったが、ライプニッツの教育思想の調査が展開し、ルネッサンス時代に遡り調査をする必要性が生じた。そのため、当初予定していた調査を優先することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、ルネッサンス時代からバロック時代までの演劇を導入したヨーロッパの貴族教育についての言説を検証する。その際に、演技に普遍的な人格形成と諸国統治のための役割練習や対話的レトリックの習得だけではなく、貴族社会の排他的で知的な文化コードに習熟する教育価値が付されたことを、知識層の教育的提言を参照するのみならず、演劇史的また教育学的観点からその重要性を検証する。とりわけ2018年度より着手しているコメニウスの直感主義の教育思想における、演劇教育について分析を継続する。 なお、発表はエジンバラで開催される「国際18世紀学会」や、「日本独文学会」を予定している。なお、現在台湾で開催される国際学会にも発表申請を行っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
円高進行により、洋書の価格が少し低下した。さらに、国内旅費について、学内学術資金から補助金を受けることができたため、その資金を使用した。次年度の使用額が増加したことに伴い、研究の発展に伴って必要になる新たな一次・二次文献の購入費に充てる予定である。
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