研究課題/領域番号 |
18K00487
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
山崎 明日香 日本大学, 商学部, 准教授 (10707350)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 演劇教育 / 貴族教育 / レトリック教育 / ライプニッツ / コメニウス / 遊戯思想 |
研究実績の概要 |
2019年度は、西欧の貴族教育の中核をなす伝統的なレトリック教育に注目した。会話術や説得術の獲得は、貴族の公共生活に必要な手段であり、外交や知識の伝達、制度の普及や宣誓に必要であり、それは権力の再生産や階級社会の秩序を維持する社会階層的な区別の目印として機能した。こうしたレトリック教育について、従来まで検討されずにいた、ライプニッツの君主教育論を対象に検証を行った。その際に、その論考で提唱された王子のためのレトリック教育を、西欧の宮廷伝統的な言語教育政策の関連と、同時代的なエリート学校教育の観点(演劇的また遊戯的な役割練習や雄弁術の習得の教育実践)から分析し、この思想家がレトリック教育を通じて、王子が宮廷生活の文化規範に習熟し、権力の再生産を実現する存在となるだけではなく、近代啓蒙主義の観点から自律した個人として理想的な君主になることを意図した点を明らかにした(研究成果については、国際18世紀学会(エジンバラ大学)、日本独文学会、桜門ドイツ文学会で発表を行った。また、2020年日本ライプニッツ協会の学術雑誌『ライプニッツ研究』で出版を予定している)。 当該研究の枠内で西欧の宮廷と俳優の関係について分析を進めた(これについては、次年度もさらに検証を行う予定である)。また、前年度から継続したチェコの教育思想家コメニウスの全人教育と遊戯的な演劇教育の関連性の分析をさらに継続した。その際に、学校教育に導入された演劇教育が、生徒の普遍的知識の獲得と道徳形成の手段と見なされていただけではなく、その現代的な言語教育への思想的な応用を分析した(研究成果は、2019年の台湾ドイツ文学会(高雄)で発表し、論文(当学会プロシーディングス)を公開した)。 また、前年度に従事した論文「ネストロイの演技術と法領域の変動について」が、2019年度に『ヘルダー学会』より刊行された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は、18世紀啓蒙主義と演劇の分析にも従事する予定であったが、ルネッサンス時代の宮廷レトリック教育の伝統の調査や、ヨーロッパの宮廷事情の調査に時間を要したため、当初予定していた調査を実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、前年度も対象にしたルネッサンス時代からバロック時代までの演劇と宮廷文化及び俳優との関係のみならず、ヨーロッパの思想家の言説を検証する。さらに、ライプニッツの演劇構想を彼の思想を基に検証し、その意義について検討する。本研究の発表については、当該年度に海外発表を予定していたが、学会開催が2021年に延期されたため、国内の学会での発表を目指している。さらに、コスモポリタン的な俳優性という特性に着目し、これについての発展的な分析を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
大学の会計処理の都合上、2月中旬から資金を抑制的に使用せざるを得ず、最終的に3月上旬で使用申請ができなくなった。このため、予定していた図書や機材が購入できなかった。この未使用額については、次年度に当該年度で購入できなかった一次・二次文献の購入費や外国語の論文校閲費に充当し、さらに映像編集のための機材の購入に充当する。
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