研究課題/領域番号 |
18K00491
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
小松原 由理 神奈川大学, 外国語学部, 准教授 (70521904)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アヴァンギャルド / ダダイズム / 身体論 / 異化 / 映画 / 自己演出 / 自己翻訳 / ジェンダー |
研究実績の概要 |
2018年度はダダ及びハウスマンを中心とした関係する人物の文献調査及び、ドイツ語圏を中心とした関連領域における最先端の議論の把握の二つを、研究初年度の基礎調査として行った。前者に関しては、ダダに関する当時のメディアの反応を集中的に取り上げたジーゲン大学での調査資料等を入手し、さらにハウスマン自身に関しても、ベルリーニッシェ・ギャラリーで保管されているハウスマンの手記や、未公刊の『ヒュレ』に収録されている映画に関するハウスマンの対話劇などが入手できた。また、ダダの詩学を考える上で、見過ごすことのできないジェンダー的視点について、国内研究先でのアヴァンギャルドに関する勉強会やワークショップなどで考察することができた。ダダイズムへの影響の色濃い未来派や表現主義を含めた広範囲な知見を踏まえ、ダダの詩学がどのように発展したかについて、重要な手がかりとなる視点を発見することができた。 後者に関しては、ミュンスターで開催された国際アヴァンギャルド会議に参加することで、ハウスマン研究者であり、『ヒュレ』のフランス語訳者でもあるHelene Thierard氏と面識を得ることができた。Thierard氏とは今後継続してハウスマン研究に関する意見交換を行うことを約束し、来年度以降により具体的な形態を模索している。 さらに、現時点での研究段階をまとめ、議論をするために2018年度末には日本独文学会でのシンポジウムにて、「ダダの新しい人間像及びそのハビトゥス」と題した研究発表を行った。会場にて興味深い意見をもらうことができ、今後の研究に大いに役立てるつもりである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ミュンスターの国際アヴァンギャルド会議への参加及び、ベルリンのアーカイヴ訪問など、当初計画していたフィールドワークは計画通りに実行することができ、また期待していた資料もそろえることができた。 また、ハウスマン研究者との知己を得ることができたこと、さらに現段階での研究の進捗をシンポジウムにて発表し、更に必要な視点を得ることができたことは予想以上のことであった。
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今後の研究の推進方策 |
シンポジウムでの発表内容を、その場での議論を含めた形で再度形にしたものを公刊する予定である。 また、ハウスマン研究者であるThierard氏のフランス語論考の何点かを翻訳したものを資料として得たいと考えている。 その上で、『ヒュレ』へと展開された、ダダイズムの詩学について研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該助成金が生じた状況としては、全国美学会への参加が国内研究先の都合により実現できなかったことにある。 翌年度は、翻訳代などの追加での支出も見込まれるため、有用な使用が見込まれる状況である。
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