研究課題/領域番号 |
18K00497
|
研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
佐々木 あや乃 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (60272613)
|
研究分担者 |
藤井 守男 東京外国語大学, その他部局等, 名誉教授 (90143619) [辞退]
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | ペルシア語神秘主義文学 / ルーミー / 精神的マスナヴィー / データベース / ニコルソン版 / コニヤ版 |
研究実績の概要 |
研究代表者は、『精神的マスナヴィー』の逸話部分の下訳を終え、出版に向け訳書の解説執筆に着手した。 研究分担者は、ルーミー研究に不可欠な基本文献蒐集をおこない、『精神的マスナヴィー』全篇の翻訳も鋭意続行した。 『精神的マスナヴィー』の数多の写本の存在が知られているが、本研究では、当初の予定通りニコルソン版を底本とし、データベースを作成する作業を進めるため、研究代表者はエンジニア班と校閲・入力班を組織し、本年度はほぼ毎月研究会を開催し、進捗状況を報告しあう機会をもった。作業途中で、イランの言語・文学アカデミー(ファルハンゲスターン)から最新のマスナヴィーが出版されたとの情報を得て最新版を入手したものの、ニコルソン版との差異がかなり激しいことが判明したため、この版は採用せず、当初の予定通りニコルソン版を底本としたデータベース作成を続行することとした。 また、ニコルソン版では、冒頭から2835詩行までが、マスナヴィー最古の版であるコニヤ版を反映しきれていないという事実も判明した(ニコルソン版は2836詩行以降はコニヤ版を完全参照している)ため、本研究においては、ニコルソン版とコニヤ版を比較しながら、2835詩行までの完全版データベースを構築するという方針転換を強いられることとなった。よって、毎月の研究会開催により鋭意準備を進めた結果、今年度は1200詩行前後までの校閲と入力、修正作業にとりかかり、作業のペースを把握することとした。次年度(最終年度)でコニヤ版に基づいた、全2835詩行のデータベース構築が完成する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ニコルソン版は最古のコニヤ版をも包含した、世界的に定評のある『精神的マスナヴィー』の版と見做されている。しかしながら、イスファハン大学文学部からニコルソン版マスナヴィーとして提供されたWordファイルのデータがニコルソン版に依拠していないことが判明したため、入力・校閲作業の双方が必要となることが判明した。 また、作業途中で、イランの言語・文学アカデミー(ファルハンゲスターン)から最新のマスナヴィーが出版されたとの情報を得て入手したものの、ニコルソン版とかなり乖離していることが判明したため、この版は採用せず、当初の予定通りニコルソン版を底本としたデータベース作成を続行することとした。 ニコルソン版では、冒頭から2835詩行までが、マスナヴィー最古の版であるコニヤ版を反映しきれていないという事実も判明した(ニコルソン版は2836詩行以降はコニヤ版を完全参照している)ため、本研究においては、ニコルソン版とコニヤ版を比較しながら、2835詩行までの完全版データベースを構築するという方針転換を強いられることとなった。毎月の研究会開催により鋭意準備を進めたことにより、今年度は1200詩行前後までの校閲を終えることができた。目下コロナウイルス蔓延とデータベース作成の基礎を担うエンジニアの体調不良により、毎月の研究会を開催できずにいるものの、次年度(最終年度)の夏には2835詩行すべての校閲を終え、入力作業を遠隔でも鋭意進められることを鑑みると、最新かつ信憑性の高い2835詩行から成る『精神的マスナヴィー』のデータベースが最終年度内に構築される運びである。
|
今後の研究の推進方策 |
『ルーミー逸話集(仮訳)』の出版に向けての準備は、研究代表者が引き続き鋭意進める。既に大学出版会との打ち合わせも重ねている。 データベースの内容の加筆修正作業は、遠隔で継続することが可能であり、コロナ禍の社会状況においても、大きな研究方法の転換を強いられる状況にはないと判断している。 毎月開催していた研究会は、今後は必要に応じてZoomミーティングで開催し、進捗状況や入力や表示に関する問題点を報告し合い、解決法を検討し、作業上のトラブルを逐一解決していく。 本研究では、とりあえず2835詩行までのデータベースの完成形を目指しているが、来年度以降も本研究体制を継続させ、将来的に『精神的マスナヴィー』全詩行のデータベースへと拡大させ、世界中のペルシア文学研究者が利用可能な、正確かつ汎用性の高い完全版データベースを構築することが望まれる。本科研により、そのための研究体制が構築されたことは、大きな収穫である。研究代表者も、近い将来、本データベースに端を発した『精神的マスナヴィー』2万超の詩行の完全版データベースを日本で完成させるべく、引き続き本研究を続け、日本で構築された『精神的マスナヴィー』のデータベースが、世界でペルシア文学研究のために活用される日が到来することを切に希望している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
データベースが完成した時に一括で支払う処理費用が最終年度に集約されるため、当該助成金が生じている。データベース構築のためにかかる費用として、最終年度にすべて使用する予定である。コロナ禍により研究会や打ち合わせができず、入力作業が当初の予定より若干遅れていることも、次年度使用額が生じた理由の1つである。
|