研究実績の概要 |
本研究は上海フランス租界で発行された『法文上海日報』(Le Journal de Shanghai, 1927-1945) を巡る日・中・仏の文化交流を明らかにすることを目的にする。今年度は経費が少ないことと、コロナ禍のため、すでに入手済みの資料の整理を中心に研究を進め、また協定校の関西大学図書館や、日本近代文学館、神奈川県立近代文学館の資料も活用した。達成した成果は主に以下である。 1)2019年のフランスでの現地調査で得た一次史料と中国、日本の史料と照らせ合わせて、上海フランス租界と関西日仏学館との関係をより詳細に把握することができ、関連論文を執筆し、まもなく発表する。 2)『法文上海日報』が報じた中国近代美術についての記事を精査したうえ、中国のデータベースも活用し、多くの新しい史実を発見した。そのため編集者の都合で刊行が遅れた旧稿を大幅刷新したこともできた。なお同じ新聞が報じた中国映画についての記事も精査し、それについての論文も執筆しており、間も無く完成する。 3)3月に上梓した単著『二人旅 上海からパリへ 金子光晴・森三千代の海外体験と異郷文学』(関西学院大学出版会)の第12章にも、フランス語新聞の主な執筆者の一人だった徐仲年の文学活動について論じた(pp.454-462)。 4)この研究と深く関わっている基盤研究(B)「上海フランス租界を結節点とする日仏中三か国の文化交流史」(課題番号:20H01302)にも主力メンバーとして活動している。zoom研究会を組織または参加し、研究発表も行った。またメールやSNSを通して国内外の研究者たちとも頻繁に情報交換をし、多くの成果を得た。
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