研究課題/領域番号 |
18K00500
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
鵜飼 哲 一橋大学, 大学院言語社会研究科, 特任教授 (90213404)
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研究分担者 |
F Bizet 東京大学, 教養学部, 准教授 (70383495)
呉 世宗 琉球大学, 人文社会学部, 准教授 (90588237)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 動物 / 文学 / 政治 / 植民地 |
研究実績の概要 |
2019年1月12日にセミナー「動物のまなざしのもとの文学」を一橋大学で開催した。司会を務めた研究代表者の鵜飼哲による本共同研究の全体的な方向づけに関する提言に続き、村上克尚(日本学術振興会)「喪の作業から共生へ――津島佑子「真昼へ」におけるアイヌの自然観との共鳴」、呉世宗(琉球大学、研究分担者)「金石範作品における動物―「鴉の死」を中心に」、中井亜佐子(一橋大学、言語社会研究科)「『ロビンソン・クルーソー』と『フォー』 近代小説における労働、動物、言語」の三本の報告が行われた。このセミナーは「研究実施計画」において「日本語文学の領域で政治的もしくは宗教的コンテクストのもとに人間と動物の関係を主題化した作品に焦点を当て国内研究者を招聘してセミナーを開催する」と述べられていた計画に英語文学との比較論的次元を加えた形で成立した。村上報告では津島作品においてアイヌ民族の動物観への参照が他界した親族たちをいかに想起するかという問いと深く関連していることが明らかにされた。呉報告では金石範「鴉の死」に描かれる主人公による鴉の殺害が済州島4・3事件という歴史的状況に照らしてどのような暴力性を内包しているかが主要な分析の対象となった。また中井報告ではデフォー作品におけるロビンソンの労働の様態、動物に対する暴力と愛着がロックやマルクスを参照しつつ検討され、そのリライトであるクッツェー作品で女性の語り手が舌を奪われたフライデーと島の動物たちをどのような関心において接近させているかが論じられた。以上の報告はいずれも本共同研究の「研究の目的」において提示された方向性に沿って重要な貢献を行った。また研究代表者と研究分担者はそれぞれ調査旅行を行い各自の研究の進展に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究計画」で「欧米において現在行われている動物に関する文学研究の現状を報告するとともにフランスから研究者を招聘して国際セミナーを開催する」と述べられていた計画が、被招聘者の事情によって2019年5月に延期されたため。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に計画が実現できなかった国際セミナーは2019年5月に「動物と文化の境界を通過するー宗教的信仰、政治、そして文学」というタイトルのもと、一橋大学で開催する準備を進めている。また2019年度内に「軍事的暴力と動物たち」(仮題)というセミナーを、韓国から研究者を招聘して琉球大学で開催する予定である。また第1回のセミナーの成果を大学の紀要などの媒体を通じて公表することも追求する。
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次年度使用額が生じた理由 |
「研究計画」で「欧米において現在行われている動物に関する文学研究の現状を報告するとともにフランスから研究者を招聘して国際セミナーを開催する」と述べられていた計画が、被招聘者の事情によって2019年5月に延期されたため。
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