研究課題/領域番号 |
18K00500
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
鵜飼 哲 一橋大学, 大学院言語社会研究科, 特任教授 (90213404)
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研究分担者 |
F Bizet 東京大学, 教養学部, 准教授 (70383495)
呉 世宗 琉球大学, 人文社会学部, 准教授 (90588237)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 動物 / 文学 / 宗教 / 政治 |
研究実績の概要 |
2019年5月25日に第2回の公開研究会を国際セミナー「動物たちと文化の境界を通過するー 宗教的信仰、政治、そして文学」として一橋大学で開催した。研究代表者の鵜飼哲の開催趣旨説明に続き、招聘研究者のカトリーヌ・パンゲ(フランス国立科学研究センター/社会科学高等研究院嘱託研究員)「イスタンブルの野良犬たちー 都市での人間/動物共生の物語」、研究分担者のフランソワ・ビゼ(東京大学)「<動物ー寓話>の生成変化」の二本の報告が行われた。パンゲ報告はイスタンブルの野良犬の一斉駆除という出来事を取り上げ、イスラームの聖典における犬をはじめとする動物の地位の他の一神教との差異、帝国末期のエリート層が受容した西洋思想の動物観とイスタンブルの民衆の信仰のなかの動物観の隔たりを詳説した。ビゼ報告は人間的言語と動物の関係に関する人類学的表象の歴史的多様性を文学史と哲学史を横断しつつ検討した。また20世紀ロシアの詩人フレーブニコフとザボロツキーの作品の重要性を強調し、人間中心的な世界観の現代的な問い直しに対して両者が占める先駆的な位置を明らかにした。 一方第1回セミナーの成果を、一橋大学言語社会研究科の紀要である『言語社会』(14号)において公表した。鵜飼哲「動物のまなざしのもとにおける文学」、村上克尚「動物から世界へー津島佑子「真昼へ」におけるアイヌの自然観との共鳴」、中井亜佐子「小説という名の箱舟のなかで - 『ロビンソン・クルーソー』と『フォー』」、呉世宗「はざまからまなざすー金石範「鴉の死」における主体・状況・言葉そして動物」は、いずれもセミナーでの発表をもとに執筆された論文である。 研究代表者と研究分担者はそれぞれ調査旅行を行い、各自の研究の進展に努めるとともに、次回以降のセミナー開催の準備作業を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究計画」で予定していた課題のうち、第1回の公開研究会では近現代の日本語文学、英語文学における人間と動物の関係の表象をそれぞれの政治的コンテクストとの関連で研究した。また第2回の公開研究会では主要にフランス語文献に依りつつ、トルコおよびロシアの近代化における人間と動物の関係の変化を、宗教的および文学的観点から研究した。第3回の公開研究会では東アジアの近代に焦点をしぼり、戦争を背景にした人間と動物の関係を、文学作品を通じて考察する予定で計画を進めている。この公開研究会は2019年度内に研究分担者が所属する琉球大学で行う予定だったが、諸般の事情により2020年度に延期することになった。また第4回の公開研究会は理系の動物研究の哲学的解釈をテーマに、研究分担者が所属する東京大学で開催する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に計画が実現できなかった公開研究会は「軍事的暴力と動物たちー文学からの問い」として、韓国人研究者2名を招聘し琉球大学で開催する予定で準備を進めている。また第4回の公開研究会は、研究分担者の所属する東京大学でベルギー人研究者を招聘して11月に行う予定である。いずれも招聘研究者の承諾を得ており、連絡体制は確立している。ただし新型コロナ肺炎の感染拡大の影響を受け、第3回の公開研究会の5月開催は中止を余儀なくされた。9月開催を計画しているが予断を許さない。最悪の場合、オンラインでのセミナー開催も検討せざるをえないだろう。ただし、第4回の公開研究会については時差の関係によりオンラインで長時間のセミナーを開催することは非現実的であるように思われる。いずれにしても以上2回の国際セミナーを開催したのち、報告書の作成、成果公開に向けた作業に携わる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
「研究計画」では第3回の公開研究会を2019年度内に研究分担者が所属する琉球大学で行う予定だったが、諸般の事情により2020年度に延期することになったため当初予算の次年度使用が生じた。2020年度に繰り越しとなったこの予算は5月開催で準備を進めていた国際セミナーに充当する予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大により参加予定だった外国人研究者の来日が不可能になり、また研究代表者の出張も困難になったため9月に延期することとした。本研究は比較論的アプローチを重視している関係からも外国人研究者の参加は研究のあるべき進捗にとって不可欠である。最終的にはオンラインのセミナー開催も検討せざるをえないが、さしあたりはできるだけ対面形式の討議の可能性を追求したい。セミナーがオンライン化される場合は招聘研究者の旅費、滞在費が不要となるため予算の組み替えが必要となるがその検討も並行して進めていく。本来の2020年度予算は主要に第4回公開研究会(東京大学)の開催費と報告書作成費からなるが、国際セミナー開催がオンラインで行われる場合はやはり招聘費用が不要となる。その場合の代替案については検討中である。
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