本研究は詩人、イスラーム思想家イクバール(Muhammad Iqbal, d. 1938)の、1905年の西欧留学以前のウルドゥー語詩作品の全体像を明らかにし、当時の文学・思想状況からその評価を行うことを目的として行われた。その結果、 彼がムスリム・コミュニティー発展のためにムスリムの心情に強く訴えかける内容の詩を書いていることが確認され、初期のイクバールをムスリム意識の希薄な「インド・ナショナリスト」と見做す一般的な考えは誤りであることが判明した。また、彼の詩が掲載されていた雑誌『宝庫』の内容分析により、彼の詩が当時のラホールの文学・思想の一般的潮流の中で異彩を放っていたことも確認された。
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