研究課題/領域番号 |
18K00505
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤元 優子 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 教授 (40152590)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 現代イラン文学 / ジェンダー / 女性作家 |
研究実績の概要 |
研究初年度である平成30年度には、①先行研究の批判的検討、および②1970年代までの女性作家の作品のジェンダー論的考察を行う予定であった。 このうち①については、予定していたN.バーゲリー著『小説の中の女性:イラン女性作家の小説作品における女性登場人物』(Tehran, 2008)のほかに、現代文学成立以前の散文における女性描写を取り上げたM.アーメリー・レザーイー著『種から花への旅:ガージャール朝時代の散文における女性の地位の変遷』(Tehran, 2000)や、風刺出版物における女性作品を扱ったR.サドル著『砂糖の国』(Tehran, 2010)などの新たな資料を、現地での資料収集活動を通して入手することができた。一方、女性をターゲットとした米国の通俗小説に関する英語文献にも目を通し、男性中心主義と通俗小説との関係性の分析手法をペルシア語小説の分析にも援用できる可能性を見出した。 ①を行った結果、現代文学が生まれる以前の近代文学と女性の関連をより詳細に知る必要が生じたため、②では1920年代までに対象を限定して研究を行った。その結果を含めた論を、「物書く女たちの系譜―イラン現代文学における女性作家―」『學士会会報』No.934 (2019/01)に纏めた。 2018年9月には、2週間イランに出張して、資料収集と現代文学研究者との意見交換を行った。また、今後の研究に資する材料として、F.ヴァフィーの定評ある中編小説『私の鳥』(2002)の前半を『イラン研究』第15号(2019/03)に訳出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度は1970年代までの女性作家の作品の補足的研究を行う予定であったが、20世紀前半に起こったごく初期の女性たちによる創作活動の把握に時間を費やし、20世紀後半の作品群にまで手が回らなかった。このため、「やや遅れている」という区分とした。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、1980年代の知識人小説の分析と1990年代の翻訳小説の分析を行う予定としていた。しかし、上記のように、前年度に行うはずだった1970年代までの作品群の補足的研究が十分遂行できず、今年度送りとなった。そこで、翻訳小説の分析は次年度に回し、20世紀後半、とくに1970年代から80年代の主立った女性作家作品の分析を、2019年度の課題としたい。 これに加え、1990年代に活躍を始めた作家のうち、ゾヤ・ピールザードの作品の翻訳出版が実現することになったため、年度の前半はこの仕事にも注力する。また、前年度に前半部分を訳出した『私の鳥』の後半部分の翻訳も年度後半に行って、今後の研究の資料としたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度の交付額に4,920円の余剰が生じた理由は、手持ちの事務用品を使ったため、消耗品費のうち事務用品を購入する必要がなくなったからである。次年度の交付予定額のうちの直接経費は40万円であるが、旅費に35万円程度必要となるため、残りの5万円を図書費に充て、余剰金4,920円でコピー用紙などの事務用品を購入する計画である。
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