研究課題/領域番号 |
18K00505
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤元 優子 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 教授 (40152590)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 現代イラン文学 / 女性作家 / ジェンダー |
研究実績の概要 |
課題研究の3年目となる2020年度には、研究計画書では1990年代以降の通俗小説の分析を行うとしていた。しかし、研究が計画より遅れがちになっていたため、2019年度の実施状況報告書に書いたように、実施計画を見直し、1960年代から80年代までの女性小説の分析を進めることとした。 1979年のイスラーム革命を挟んで活躍を続けてきた数人の女性作家のうち、2020年度はゴリー・タラッキーに注目し、革命によって作品がどのように変化しているかを考察した。重要な作品である「父」を翻訳・解説し、『中東現代文学選2020』(近刊)に寄稿した。これと並び、滞っていたファリーバー・ヴァフィー著『私の鳥』の後半部分の翻訳作業を終了し、『イラン研究』17号に投稿、掲載された。この二つの作品は、本研究課題の検討事項として重要であるミソジニー、セクシュアリティ、性別特性、性役割、家族観の分析のための重要な素材となる。 また、当初の研究計画で想定した「翻訳作品の影響」の考察を外した代わりに、女性による自叙伝を研究対象に含めることにし、今年度はサッターレ・ファルマーンファルマーイヤーンの『ペルシアの娘―ある女性の父のハーレムからイスラーム革命までの旅―』について論文を作成し、『記憶と記録に見る女たちの百年』(近刊)に寄稿した。 なお、2019年に大同生命国際文化基金から出版された『復活祭前日』が、2020年度の日本翻訳者協会翻訳特別賞を受賞した。 本研究課題の予算のうち大半を占める旅費を用いて、イランもしくは欧米に出張し、女性作家と面会する計画であったが、コロナ禍により断念した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度は、コロナ禍の影響でこれまでにない大学教育の方法模索に時間を取られ、また、研究対象であるイランだけでなく外国への出張が不可能な状態となり、研究進行に多大な影響が出たため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は2021年度が最終年度となるため、これまでに進めることのできた、1980年代から2000年代の女性小説の傾向の分析という、当初の計画について、できる限りの取りまとめを行う。とくに、イランの女性小説におけるミソジニーについて、「イラン女性小説における父の娘」という小テーマを設定し、これを中心とした論文をまとめる予定である。 2021年度に計画していた海外出張は、コロナ禍で実現が困難であると予測される。その影響で研究自体も遅れているので、補助事業期間の延長手続きも視野に入れつつ、予算執行に当たりたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当研究課題の予算構成の大半を占める旅費が、コロナ禍の影響で全く使用できず、結果として残額が膨らんだ。今年度の後半に、もし旅費使用が可能な状況になれば、イランもしくは他の外国に出張したい。それが叶わなければ、書籍等の物品費に適切な額使用し、残額は補助事業期間の延長を申請するか、返納するかとなると考える。
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