研究課題/領域番号 |
18K00505
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤元 優子 大阪大学, 大学院人文学研究科(外国学専攻、日本学専攻), 名誉教授 (40152590)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | イラン現代小説 / 女性作家 / ジェンダー |
研究実績の概要 |
本研究は、1980年代後半から2000年代までの女性小説を題材に、小説という自己表現の場で、女性たちが自らの性と生をいかに捉え、表現してきたかを考察することを目的としている。そして大きな目標としては、イスラーム革命後のイランにおけるジェンダー構造とセクシュアリティのあり方の変容を捉えようとする。研究計画の段階では、純文学だけでなく、通俗小説や翻訳小説の検証も行うこととしていたが、研究期間内に取り組む課題としては盛りだくさんに過ぎたことが徐々に判明してきた。 そこで2023年度は、研究対象を純文学に絞り、これまで取り上げたS.ダーネシュヴァル、G.タラッキー、Z.ピールザード、F.ヴァフィーに加え、M.ラヴァーニープールについて、より深化した研究を行うこととした。地方文学の旗手として、ペルシア湾岸地域の風俗習慣を色濃く反映し、マジックリアリズムを駆使して独特の世界観を打ち出した彼女の作品群が、ジェンダー構造の分析にも多くの情報をもたらすと考えたからである。また、イスラーム革命後の女性の生き様の変化を批判的に取り上げた作品も目立つ。 このラヴァーニープールによる短編小説作品のアンソロジー作成を以前から計画していたが、2023年度は、その計画を拡大し、三編の長編小説の概要解説、作家情報、作品分析も伴った中身の濃い研究書とするための準備を行ってきた。 それ以外には、日本オリエント学会の公開講演会に講演を依頼されたため、「イラン現代小説に映る古代の光と影」という演題で講演を行った(2023年10月28日)。そこで取り上げた作品の一つは、女性作家によるSF短編小説であり、多彩な女性作家が活躍する現況の一端を示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記のように、当初の研究計画の内容からはかなり絞られた研究内容となってきたため、結果的には「遅れている」と評価するべきである。ただ、新たに設定した目標に向かっては着実に進んでいるので、区分を「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
今年度が最終年度となるため、上記のラヴァーニープール研究書を残余の予算を用いて出版する。 この作品集出版の情報収集のため、作家の故郷であるイラン南部のブーシェフル市を訪れる予定を立ててきたが、昨今の政治情勢の変化でイランへの渡航が制限されており、今後実現するかどうか不明である。その場合は、この作家がディアスポラ生活を送っている米国訪問に変更する可能性もある。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度には、本助成金予算の半分以上を占める国内外の出張費を使用する目処が立たなかったため、予算の使用は最低限の書籍購入に充て、最終年度の外国出張と書籍出版のために残しておくことにした。そのため、2024年度には、イランもしくは米国出張と研究書出版で予算を使い切る予定である。
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