研究課題/領域番号 |
18K00507
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
李 郁惠 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 准教授 (80399071)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 台湾文学 / 日本語作品 / 中国語作品 / 翻訳 |
研究実績の概要 |
今年度は、昨年度に続き、新型コロナウイルス感染症の影響により現地調査を実施することができなかったため、オンラインや図書館の文献複写サービスなどを通じて文献の収集及び整理に努めた。成果として、1945年終戦直後の台湾で刊行された新聞や雑誌には、台湾人作家が書いた日本語作品の中国語訳や、中国人作家が書いた中国語作品の日本語訳が多数掲載、紹介されていたことが分かった。このことから、中国語一元化が本格的に進められる前に、台湾の文壇は少なくとも日本語と中国語という二つの言語が共存していたことがいえる。しかし、1946 年 10 月 25 日に中国語の普及を妨げるという理由から政府公報や中国国民党発行の『中華日報』などでは日本語使用が廃止され、日本語が次第に公の場から退けられることとなった。戦前の日本語作品に対する翻訳が再びブームを迎える1970年代末まで、台湾文学のうちに秘める多言語性が不問に付されるままだった。 以上一連の流れを把握するための研究ノート作成に取り組みながら、本課題の延長線で文学における多言語使用の問題を引き続き考えるための課題を構想してみた。その準備作業として、2021年10月に東アジアと同時代日本語文学フォーラム、12月に韓国日語日文学会でオンラインによる口頭発表を試みた。いずれも日本語文学における異言語接触、及び多言語表現を論じるものであった。一方、多文化性に関連することから、植民地統治下という非対称関係にある文化の衝突を描く湯浅克衛の『棗』について分析した論文は、韓国日語日文学会誌『日語日文学研究』第119輯に掲載されている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた現地調査は、新型コロナウイルス感染症の影響により実施することができなかったが、調査範囲及び項目を調整して新たな成果を得ることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
課題期間が再延長された今年度では、海外渡航が再開され次第、現地調査を実施するとともに、新しい課題へと広がる可能性を探ってみる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、現地調査と学会発表を実施することができなかったため。 次年度に延期した現地調査と学会発表等の実施費用に充てる予定。
|