研究課題/領域番号 |
18K00510
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
金 永昊 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (60712031)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 白話小説 / 都賀庭鐘 / 三言二拍 / 夢決楚漢訟 / 古今小説 / 西漢演義 / 三国志演義 |
研究実績の概要 |
今年は、『古今小説』第三十一巻「鬧陰司司馬貌断獄」の韓国における影響作『夢決楚漢訟』についての文学的特質について検討した。これについては、すでに拙論「韓国における短編白話小説の受容―『古今小説』第三十一巻「鬧陰司司馬貌断獄」と『夢決楚漢訟』―」(『和漢比較文学』第六十五号、和漢比較文学会、二〇二〇)において検討する機会が与えられたが、紙幅の制限により、結局のところ充分に論じることが出来ずに筆を置いてしまった。 したがって、今回は「冥界で行われた明快な判決-韓国における短編白話小説の受容(続)-」と題して、本学の『教養学部論集』第187号に論文を投稿し、以前の論稿で論じ得なかったことについて論じている。その内容としては、「怨みを晴らすための転生、そして玉突き事故」で范増・戚氏・如意・顔良と文醜について、「歴史認識及び人物評価」においては、韓信・項羽と劉邦・樊カイについて検討し、最後には「忠」と「義」という思想的な面について考察を行った。特に、「鬧陰司司馬貌断獄」では「忠」、『夢決楚漢訟』では「義」の思想に焦点が当てられた判決が下される場合が多いことは、両国の思想史の中で本作を位置づけるうえで極めて重要なものになっていることを指摘した。 今後の課題は、日本の都賀庭鐘の『英草紙』第五編「紀任重陰司に至り滞獄を断くる話」と比較することにより、拙論で「いかなる形で自国の風土に合わせて『日本化』『韓国化』が行われたのかを究明することが、両国の文学研究において大きな課題の一つ」と述べた通り、日本と韓国における中国短編白話小説の受容の様相を比較し、「両国の受容史を相対化して理解する」ことによって、その独自性や特質を究明することであると言えよう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまで『古今小説』についての日韓における影響については、筆者のこれまでの論稿により充分な検討が行われたと言えよう。しかし、日韓における白話小説の受容様相について、その全体像を把握するためには『今古奇観』についての研究が必要である。しかし、コロナ禍により、中国での『今古奇観』についての資料調査、韓国に所蔵されている『今古奇観』の影響作について調べることが出来なかった。また、日本の国内出張も難しくなり、なかなか資料調べがうまく進んでいない状況である。ただ、東京大学に所蔵されている中村庄次郎による朝鮮語訳『今古奇観』は、以前訪問した際に書誌を調べたことがあり、オンラインでも内容を公開しているので、最小限の研究は出来ているのは不幸中の幸いである。
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今後の研究の推進方策 |
今のところ、中国・韓国への出張はおろか国内出張すらなかなか出来ていないので、オンラインで公開している資料に頼るしかないのが現状である。幸いに、中村庄次郎による朝鮮語訳『今古奇観』は、手元に資料があるので、その読解に専念し、どのような文学的特徴を有しているかについて検討を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、学会が開かれず、資料調べのための出張も出来なかった。2021年度も学会はキャンセルになるか、オンラインで行われるようになり、資料調べのための出張も改善の見込みが見えていないのが実情である。しかし、オンラインでの資料の取り寄せなど、今の状況の中で出来る範囲で研究を進めていきたい。
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