研究課題/領域番号 |
18K00512
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
吉田 裕 東京理科大学, 工学部教養, 講師 (20734958)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 植民地統治 / 米軍基地 / 反米主義 / 短歌 / 沖縄 / 英語圏カリブ海地域の文学 / 冷戦 / 朝鮮戦争 |
研究実績の概要 |
2018年度の研究状況は主に以下の3点に集約できる。1)2018年7月ロンドンで行われたイギリスのカリブ研究学会において発表した。1950年代の英語圏カリブ海地域の作家による作品を扱い、イギリスによる植民地統治の継続かつ別様の支配形態として、米軍基地がいかに描かれているかについて論じた。パネル発表の際の司会者およびフロアとのやりとりで、同時代の米軍基地を扱った文学について、有益な情報を得ることができた。2)2019年2月に沖縄大学(那覇)での研究会(沖縄統治性論研究会)にて発表した。歌人の新城貞夫が黒人兵について歌った短歌について論じた。今回は、米軍統治下の沖縄で、1950年代から施政権返還が現実味を帯びてきた60年代後半のあいだに、反米主義がいかに変容したのかという問いを軸に据えた。二日間にわたって行われた研究会で、他では得ることのできない貴重なコメントや指摘をいただくことができた。3)成果発表について。共著を一冊、論文を一本、翻訳を一冊刊行することができた。共著(『国民国家と文学』作品社、2019年)では、ジョージ・ラミング作品における恥の情動と植民地主義の心的次元について論じた。論文は勤務先の大学の紀要に発表したもの。こちらは、エドガー・アラン・ポー「群集の人」とシャルル・ボードレールのエッセイ「近代の画家」や散文詩「群衆」を扱い、19世紀ヨーロッパの文学者が、植民地と群衆のつながりについて、いかに書いたか、あるいは書かなかったかについて論じた。翻訳は、バルバドスの作家ジョージ・ラミングの最初の長編小説であり代表作でもある『私の肌の砦のなかで』(1953年)の全訳である。理解の助けになるように、長めの解題を付した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ワシントン DC の国立公文書館や沖縄の県立公文書館において関連する資料を収集する予定であったが、いずれも思うように進んでいない。これらに関しては、事前の調査を十分に行なった上で、慎重に資料に当たりたい。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には、構想中のものでまだ発表などをしていないものについて、最低一つは手をつける。とりわけ、トリニダードの米軍基地について書かれた文学、とりわけ、Samuel Selvon, A Brighter Sun (1951)およびRalph de Boissiere, Rum and Coca Cola(1956)については、早めに着手したい。また、これまでに執筆したものの論文にしていないものや公表していないものも含め、論文形式に持っていくようにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたより、旅費の費用が少なくて済んだため。
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