研究課題/領域番号 |
18K00512
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
吉田 裕 東京理科大学, 工学部教養, 講師 (20734958)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 冷戦 / カリブ文学 / 米軍統治 / 沖縄 / トリニダード / 反戦反基地運動 / サミュエル・セルヴォン / 新城貞夫 |
研究実績の概要 |
2019年度の研究状況は主に以下の3点。1)2019年6月バンクーバーのブリティッシュ・コロンビア大学にて行われたCACLALS(カナダ・コモンウェルス文学および言語学会年次総会)にて発表した。前年度に引き続き、60年代後半に沖縄の歌人新城貞夫が黒人兵について歌った短歌が指し示した不可能な連帯の可能性と、C・L・R・ジェームズが1953年にニューヨークのエリス島に収監中に書いたメルヴィル論にておこなった、朝鮮戦争の捕虜と自らの状況を同一視するという「賭け」とも言える試みを比較した。聴衆の一人でカリブ文学の専門家であるアリソン・ドネル氏(イースト・アングリア大学)から後ほど好意的なコメントを頂いた。2)同年11月、トロントのヨーク大学にてシンポジウム"Pedagogies of the Sea"に参加した。ディシプリンにかかわらず「海」についての問いを枠組みとした会議であった。やはり新城貞夫の短歌について、とりわけ反戦反基地運動に参加した米兵らとの関わりについて、特に、カリブ海地域出身の米兵が沖縄をどのように見ていたのかということを中心に論じた。キー・ノートのIsabel Hofmeyr氏(南アフリカ、Witwatersland大学)にも特別のmentionをいただいた。また、パトリック・テイラー氏(ヨーク大学)をはじめとするカリブ文学の専門家らと交流できたのも思わぬ収穫であった。3)2020年3月、これまでの発表の成果としてinter-asia cultural studies誌に 論文"The Cold War regime of translation in Trinidad and Okinawa: Samuel Selvon’s A Brighter Sun and Sadao Shinjo’s tanka poems"を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題に直接に関連する業績は、最終年度に出すことができれば十分と思っていたが、意外にも、核となる内容に関しての査読論文をひとつ掲載することができた。もちろん、資料その他については、十分な収集は進んでいない。とはいえ、これからの研究を進めるにあたって土台となる成果をひとつ出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19という予想外の出来事のため、実際に北米やカリブ海地域の大学を訪れて資料を複写するという、本研究において重要な作業の一つができなくなってしまったのは、残念である。その代わりにはならないが、それでも、これまで発表ないし研究を進めてきた素材について、形のあるものとしてまとめるという作業を行うことは可能である。これからは、こちらを中心に進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の成果発表として書籍を刊行するため
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