研究課題/領域番号 |
18K00512
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
吉田 裕 東京理科大学, 工学部教養, 准教授 (20734958)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 帝国 / 群衆 / 近代 / 冷戦 / 朝鮮戦争 / 監獄 / レイシズム |
研究実績の概要 |
本年度は海外の図書館やアーカイヴにおけるリサーチを行うことはできなかった。そのかわり、これまでの研究の成果として単著(『持たざる者たちの文学史 帝国と群衆の近代』月曜社、2021年)を刊行した。基本的には英語で書かれた博士論文の原稿を日本語に翻訳し、できるだけ研究内容をアップデートすることに時間とエネルギーを割いた。とはいえ、本研究課題にも密接に関わる。というのも、本研究課題にて中心となる冷戦と脱植民地化、そして環大西洋と環太平洋の脱植民地化および国民国家形成過程の比較というテーマ自体は、問題意識として、萌芽的な状態ではあるが博士論文ですでに存在していたからである。そのため、各章を書き換えるにあたって、できるだけ本研究課題に問題意識を近接させつつ、一貫性のある一冊の研究書としての体をなすように腐心した。 また、国際学術誌The Journal of Commonwealth Literature に"Blueprint for interracial solidarity: C. L. R. James’s Mariners, Renegades, and Castaways as prison writing"と題する論文を発表した。こちらは、以前の科研研究課題から継続して取り組んでいた内容。今回の課題と継続するのは、帝国統治における監獄の役割を歴史的に位置付けた上で、冷戦初期の反共主義下におけるレイシズムの強化にいかにその監獄システムが用いられたかを論じた。以上の文脈から、とりわけ、トリニダードの思想家C・L・R・ジェームズによるハーマン・メルヴィル論『船乗、叛逆者、流着者』の最終章におけるエリス島での監獄記に焦点を詳しく論じ、朝鮮戦争における連合国側の捕虜が収容されていた巨済島への言及を同時代の環太平洋的な帝国統治における未踏の連帯のための焦点であったことを論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先述のとおり、アーカイヴでの作業はできなかったものの、成果のアウトプットはある程度進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度が本研究課題の最終年度となる。今年度はすでに英語論文の出版が一報決定している。さらには、10月に国際学会への参加を予定している。こちらは、計画書には記していたものの、いまだ未着手のテクストを対象とするので、できるだけはやめに準備にとりかかりたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
書籍出版に際して出版社に支払った金額を差し引いて、余りが生じたため。
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