研究課題/領域番号 |
18K00515
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研究機関 | 京都ノートルダム女子大学 |
研究代表者 |
鷲見 朗子 京都ノートルダム女子大学, 国際言語文化学部, 教授 (20340466)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アラビアンナイト / 千一夜物語 / 枠物語 / イスラーム / 写本 |
研究実績の概要 |
101夜物語のライデン写本に関する論文を執筆し、令和4年に国際雑誌に投稿した。現在はその審査結果を待っている。 くわえて、令和4年度は京都大学の勝又直也教授の科研費研究と共催で、Arabic and Hebrew Folkloric Stories と題した、本研究と密接な関わりのあるテーマを扱う国際ワークショップを京都大学で実施し、その一環で研究代表者である鷲見朗子の研究成果の一部を発表した。 国際ワークショップは対面でおこない、英語およびアラビア語が使用言語で、物語と写本という焦点の定まった内容であったにもかかわらず、日本人とアラブ人あわせて20人ほどの参加者を得ることができた。写本研究をリードする外国人研究者の招聘により、アラビア語とヘブライ語による写本を扱った複数の研究をひとつのワークショップで議論し、物語や写本に関して、方法論や文献情報、知識を共有できたことは大きな成果であった。 レバノンのアメリカン大学ベイルート校のイナース・ハンサ講師、エジプトのサウスバレー大学のハイサム・シャルカーウィ講師と京都大学の勝又教授、同じくサウスバレー大学のファラジュ・アルファフラーニー教授、そして鷲見朗子が発表した。 鷲見朗子はFrom Despair to Recovery in a Chinese Buddhist Story and the Frame Story of The 101 Nights and The 1001 Nightsという題目の研究報告を英語およびアラビア語で行った。アラビア語で書かれた101夜物語と1001夜物語の枠物語と中国語で書かれた仏教物語との比較分析のなかで、ミソジニー的、そしてミサンドリ的な側面に焦点をあて、男性主人公の王が絶望から回復に至った道のりを明らかにした。ほかの発表者や参加者より有益なコメントをもらい、非常に有意義な場となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ライデン大学の写本テクストの書き起こし作業はほぼ完了した。本写本のなかで読解が困難な文章や単語について質問したり、目指す校訂本の方針について相談したりするため、レバノンの大学、ドバイの研究所でアラビアンナイトや写本学の専門家と面談し、論文の投稿につなげたのみならず、ロンドンの図書館で調査をおこない、一定の成果を得た。 枠物語については、令和5年1月に主催した国際ワークショップによって、物語および写本研究について知的交流および情報共有を深めることができた。また、自らも発表したことで、論文の方向性や改善点が明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
ライデン大学写本テクストの書き起こしたものを整理し、ほかの101夜物語の写本との照合をおこない、校訂本の作成を進める。作成を始めると、さらにさまざまな疑問点や問題点が現れることが予想されるので、専門家の意見や知見を仰いだり、写本の実物を閲覧したりするため、中東、ヨーロッパ、アメリカなどの研究施設を訪ねる予定である。中間アラビア語を含む本写本において、本文と注釈の書き分けについても検討を続ける。 枠物語については、国際ワークショップでの発表原稿をもとに、王と若者の妻の不貞とそれがもたらず王の絶望、そして回復へのプロセスを、仏教説話との対比によって、女性蔑視、男性蔑視の両面からさらなる文献調査をおこない、論文執筆を進め、投稿につなげたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は海外調査や海外からの研究者の招聘を実施することができ、それなりの成果をあげることができたが、2020年度および2021年度に新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けたこともあり、海外調査などが計画通り進まなかったため、次年度使用額が生じた。 2023年度は海外調査や研究成果発表に係る費用に充当する計画である。
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