千一夜物語と関係があるとされる百一夜物語の枠物語の中で、ミソジニー(女嫌い)に隠されたミサンドリー(男嫌い)の要素を明らかにすることを目的とした。この枠物語と、漢訳大藏經中の仏教物語及び千一夜物語の枠物語との関係性を精査した結果、ミソジニーは女性登場人物の夫に対する裏切り、そしてミサンドリーはそれを受けて女性に復讐する男性登場人物の残虐行為に見られた。仏教とイスラームの宗教的背景が物語解釈に影響を及ぼしたことが確認された。写本研究では、これまで所在がわからなかったルネ・バセ所有の百一夜物語写本が、ライデン大学図書館所蔵の写本と同一であることを証明し、写本校訂と方法論を概ね確定することもできた。
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